【マンガ】『サザンと彗星の少女』―宇宙版・天空の城ラピュタ
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『サザンと彗星の少女』赤瀬由里子 / リイド社
⇧2018年4月発売。
上下巻に分かれていて、完結しています。
<フルカラーコミック>
この漫画を読んでまず驚かされるのは、全ページカラーだということです。
しかもデジタルによる「塗りつぶし機能」でごまかしたものではなく、アナログ作業による着色(おそらく水彩)です。
これは普通の(白黒の)漫画を描く5~10倍くらい大変です。
デジタルではないので塗り直しができず、主線が着色時ににじんでしまうリスクもあるからです。(「それもアナログの味である」と考えてくれる漫画読者は今は少ない)
つまり、フルカラーコミックを描くのは狂気の所業なのです。
ほとんどの漫画はモノクロであり、数ページだけカラーになっている漫画ならたまにありますが、フルカラーのものはまずありません。
作画に手間と時間がかかり過ぎるし、カラーで印刷しなければならないために印刷費用もかかって、出版社にとってはビジネス的にデメリットが大きいからです。
それにもかかわらず出版不況の中、フルカラーコミックで発売するのは相当な自信作ということでしょう。
とはいえ、バンド・デシネをはじめとする海外の漫画では、フルカラーのコミックは珍しくありません。
(※バンド・デシネとは、フランスやベルギーを中心とした漫画作品のことです。)
漫画が娯楽であると同時に、芸術作品でもあるという認識があるからでしょう。
大衆に向けて発信しているというより、コアなファンに喜んでもらうために最高のクオリティのものを作っている印象です。
日本ではコンスタントに漫画作品を出すためにモノクロで描くスタイルが定着していますが、これからの時代はフルカラーで極限まで絵のクオリティを上げた作品が、世界の主流になっていくのかもしれません。
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<あらすじ>
遠い未来。
地球では高性能ロボットや他星人が活躍しているお陰で、地球人が就ける仕事がありませんでした。
そのため、宇宙へ出稼ぎに行くことが一般的な地球人の生活スタイルとなっています。
主人公の青年・サザンも電気技師として他の惑星に出稼ぎに行く毎日です。
ある日、サザンは残業に夢中になるあまり、帰宅のための最終便(船)に乗り遅れてしまいました。
宇宙船の発着駅は保護膜で覆われているものの、マイナス270度の宇宙に囲まれて一夜を過ごすことに彼は不安を覚えました。
そのときバイク型宇宙船に乗った赤い髪の少女・ミーナが、困っている様子の彼に声をかけてきました。
彼女は「困っているなら地球まで送っていくよ」と言ってくれたのです。
サザンはその提案を受け入れ、地球まで護送してもらうことにしました。
彼らは地球までの道すがら、巨大化能力をもつ豚・キッド率いる盗賊団の襲撃を受けました。
追われているのはミーナであり、キッドたちは彼女の持つ特殊な力を手に入れようとしていたのです。
実ははミーナの正体は彗星人でした。
彗星人とはその名の通り、彗星から生まれた人間のことです。
彗星の核の有機物を生殖細胞に埋め込まれた人工生命体です。
その実験では予期されていなかったものの、ミーナは体内に巨大なエネルギーを秘めていました。
そのウワサはすぐに広まり、彼女のエネルギーを獲得しようとする連中が宇宙中から集まって来て、彼女はどこへ行っても追われる身となったのです。
ミーナの行くところは盗賊もついて回るため、彗星人の存在は災いを呼ぶとして人々から忌み嫌われていました。
そのためサザンと親しくなったミーナでしたが、サザンの身を案じた彼女はサザンから距離を置こうとします。
そんな中、ミーナが巨大宇宙船アグルダにさらわれてしまいました。
サザンはキッドたちと一緒に、ミーナを救出する旅に出発します。
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<まとめ>
一言で表現するなら宇宙版の『天空の城ラピュタ』です。
青年と少女が出会い、少女は特殊なエネルギーを持っていて、そのエネルギーを狙う奴等がいて、少女はそいつらにさらわれてしまいます。
青年は自分が無力なのを自覚しつつも、最初は敵だった盗賊団と手を組んでミーナを救出に向かいます。
向かうのは、疑似ブラックホールの中に隠れた超巨大な宇宙都市です。
この都市が描かれた見開きページは必見です。
『ラピュタ』に似ているというのは簡単ですが、王道のSFファンタジーを描こうとすれば自然とジブリ感が出てしまうのは仕方のないことです。
むしろ著者の「王道を走ってやろう」という心意気に好感が持てます。
新人のデビュー作というのは、得てして奇抜さを前面に出して目立とうという尖った作風になりがちだからです。
バンド・デシネの漫画のクオリティと遜色のない、フルカラーコミックをぜひ体験してみて下さい。
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