【マンガ】『パンダ探偵社』1巻―ヒトではなくなっていく哀しさと覚悟
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『パンダ探偵社』澤江ポンプ / リイド社
⇧2018年12月発売。
<Web連載マンガ>
『パンダ探偵社』はリイド社が運営するトーチWebで連載されています。
紙の雑誌連載ではありません。
他には松本次郎『いちげき』や赤瀬由里子『サザンと彗星の少女』、
『このマンガがすごい!2019』のオンナ編で1位を獲得した『メタモルフォーゼの縁側』の著者・鶴谷香央理さんの『don't like this』などが連載されています。
最近は大手も中堅も各出版社はどこでも、紙のマンガ雑誌だけではなくWeb連載をやるのが一般的になりましたね。
紙のマンガ雑誌はどんどん売れなくなってきているので、寂しいですが当然の流れでしょう。実力のある作家の数は多いのに、紙面の都合上、活躍する場が限られているという状況が変わったのは良いことだとは思います。
雑誌の売上げで赤字が出ても、コミックの売上げで取り返すというビジネスモデルでこれまではやって来れましたが、それも通用しなくなって来ました。
雑誌を発行すると赤字が増える可能性が生まれますが、Web連載なら印刷する必要はありません。
人気作品だけを紙でコミック化すればいいので、出版社のリスクは最小限に抑えられるというメリットがあります。
そのうちコミックですらも紙媒体では発行しなくなる時代がやって来るのでしょうか。
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<あらすじ>
世界には奇妙な病気が広がりつつありました。
人間の身体が徐々に何らかの動植物に変化していき、いずれ人格も失われるという不治の病です。
突発性多発性染色体変容、通称・「変身病」と呼ばれています。
主人公の半田は身体に異常を覚えたので、医者に診察してもらいに行きました。
そこで「あなたはやがて、ジャイアントパンダになる」と告げられます。
病気になったことで教職をクビになり、路頭に迷いそうなところを学生時代の先輩である竹林に拾ってもらい、探偵の助手として働くことになりました。
半田と竹林が扱うのは、変身病に絡んだ依頼のみ。
内容は現実の探偵と同じ、変身病にかかった人物の人探しや身辺調査です。
また、完全に動物化してしまって理性を失った人間を収容する場所の一つとして、動物園があります。
動物園には変身病の相談センターがあり、必要に応じて探偵が斡旋されたりします。
竹林はそんな動物園と提携しており、各地でトラブルを起こす動物化した人間の捕縛の旅にも同行します。
第4話では鹿化しつつある男が描かれます。
彼の発病は家族に受け入れてもらえず、山中に身を隠すことになりました。
彼が人への窃盗や傷害を繰り返していることが問題になり、半田たちは彼を捕まえに行きます。
ついに彼らは出会うことになりましたが、鹿男は著しく向上した身体能力ゆえに、社会性と倫理観が欠如していました。
もはやお互いが理解し合えることはなかったのです。
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<まとめ>
「突発性染色体変容」という病名がつけられていますが、詳しいメカニズムは説明されていません。SF的な言葉でリアリティを演出していますが、ファンタジーとして読むべきマンガです。
SF的な設定に関する描き方として、
一般的には男性作家はその設定の細かな部分まで解説するのに対して、
女性作家は設定の説明は軽く流して、その状況下での人物たちの感情の方を重点的に描く傾向にあります。
どちらにウエイトを置くかというバランスの問題です。
もちろん例外はあります。
このマンガがまさにそうです。
著者はネット情報によれば男性ですが、病気のメカニズムではなく、登場人物たちの感情に焦点を当てて描いています。
徐々にヒトではなくなっていく変身病患者たちの生き様、哀しさ、覚悟。
それを見守る周囲の人々の苦しみ、切なさ。
可愛らしいふわっとした絵柄ですが、内容はシリアスです。
センスあふれる絵を一度見てみて下さい。
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