【マンガ】『Artiste』(4巻)―いい仕事に傲慢さはいらない
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『Artiste』さもえど太郎 / 新潮社
↑2018.12.07発売
3巻から1年8ヶ月ぶりの新刊です。
コミック刊行ペースがゆっくりになってきているのは何故でしょうか。
ようやく厨房内では仲間意識が全員に芽生え、仕事が上手く回りだしたかに見えたところで、今度は厨房とホール(給仕長)との連携が上手くいきません。
給仕長の偉そうで嫌味な態度に厨房スタッフたちは彼をバカにします。
「どうせホールの奴らなんてロクに料理も作れやしないのに」と。
給仕長は厨房の人達に「お前たちは何も考えずただ料理作ってりゃいい」と言います。
一方、主人公・ジルベールの住むアパートの住人・アキオは、趣味で描いてネットで公開していたマンガが日本の編集者の目に止まり、「その作品でプロとして雑誌連載しませんか」という勧誘を受けました。
(※ジルベールの住むアパートは一芸を持っていることが入居条件で、画家、音楽家など様々な芸術家たちが住んでいます。ジルベールは異常嗅覚で合格。)
アキオは大手企業で働いていましたが、編集者に「連載作家は忙しいから兼業は無理だ」と言われて仕事を辞めて、連載準備に専念することにしました。
しかし、当初編集者が提示した「10月開始」という時期から、12月、2月、5月とどんどん後ろにズラされていきます。言ってたことと違うし、それを謝りもしない。
「連載開始時期が延期になることなんてフツーにあることです。
それを2月に開始できる状態にまで持っていけたのは僕が頑張ったからですよ?」
とまで言い放ちます。
目茶苦茶腹が立ちますねこんな奴は。
他にも、マンガ業界にありがちな、新人作家の作品を「売れるメソッド」とやらでこねくり回し本来あったはずの良い部分を無くしてしまう、傲慢で視野の狭い編集者の悪癖が遺憾なく発揮されています。
「そんなに変更したら元の作品とは別物になってしまいますよ」とアキオが訴えても、
「我々はプロなので僕の言う事に従っていればいい」と聞く耳をもたない。
「作品のテーマが全然変わってしまっているじゃないですか!」と言っても、
「じゃあこの作品にはどんなテーマが込められているんですか?」と聞く始末。
アキオは愕然とします。
「それを分かっていないのに、俺に声をかけてきたんですか」と。
編集者は作家が何に苦しんでいるのか、何が不満なのか、何が不安なのか理解しようとしません。編集者にとってアキオは、何百人と抱えている新人作家の卵の一つに過ぎないのだから、いくらでも使い捨てできるので気にならないのでしょう。
マンガ編集者が全部こんな奴ではないとは思いますが、一部ではこんな奴も実在しているのでしょう。嫌ですね。
仕事は一人では出来ません。
パートナーやチームメイトとの信頼関係がないと、仕事そのものが破綻します。
長年の経験とやらが人を傲慢にさせ、傲慢さが誠実さを失わせます。
誠実さのない仕事ぶりは、パートナーやチームメイトに信頼されません。
きちんと謝ること、言葉を尽くして説明すること、不安なら話し合うこと。
簡単そうでいて、いつもちゃんと出来るかは難しいものです。
結局、ジルベールたちは給仕長と歩み寄ることができましたが、
アキオは編集者と袂を分かつことになりました。
一冊の中での対比の構図の描き方が上手いですね。
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