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【小説・ミステリー】『デフ・ヴォイス』―手話通訳士の世界

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『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』丸山正樹 / 文藝春秋

⇧2015年8月発売。文庫です。

 

『デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士』はシリーズ第1作目であり、

他に『龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章』『慟哭は聴こえない』が出ています。

これらはまだ文庫化されておらず、ハードカバー版か電子書籍版で読めます。

 

 

<ろう者の世界>

耳が聞こえない者のことを「聾者」(ろうしゃ)といいます。

「ろう」とは差別用語ではなく、単に「耳が聞こえない」という意味です。

 一方、耳が聞こえる人のことを「聴者」と呼ぶこともあります。

ろう者はろう学校などで、補聴器を使用して唇の動きを読んだり、発声練習で音声日本語を学ぶ聴覚口話法という教育を受けるそうです。

教育の場で手話が使われることは、最近までほとんどなかったとのこと。

 

 手話には二種類あることをご存知でしょうか。

「日本手話」「日本語対応手話」です。

前者はろう者独自の手話で、文法も日本語と異なります。

後者は音声言語である日本語に手話単語を一語一語あてはめていくもので、手話サークルや手話講習会等で学ぶ多くの手話は「日本語対応手話」です。

両者は全く別物で、両方できる人もいれば、両方できない人もいます。

あるいは片方だけできて、もう一方はよく分からないという人もいます。

 

ろう者は、手話のできない聴者とは込み入った会話ができません。

もちろん自分の使っている手話を周囲のろう者が使えなかったら、同じく会話ができません。

では、もしろう者が裁判の被告人になったらどうするのでしょうか。

それ以前に警察の取り調べが出来るのでしょうか。

勝手に憶測だけで決めつけられて、冤罪にされないのでしょうか。

 

この小説では、手話通訳士である主人公が声なき声を聴いて、事件の真相を解明していきます。

 

「手話通訳  手 画像」の画像検索結果

 

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<あらすじ>

 主人公・荒井尚人は20年警察で事務の仕事をしていましたが、警察内で行われていた組織ぐるみの裏金作りを告発したことで、居場所がなくなり退職しました。

それから警備員のアルバイトで食いつなぎながら正社員の道を探しましたが、再就職先は見つかりませんでした。

ハローワークの職員に「何か特別なスキルはないのか」と聞かれた彼は、「手話ができます」と答えました。 

荒井がかなり自信を持っていることから、それなら「手話通訳士」の資格検定試験を受けてみたらどうかと提案されます。

 

荒井は資格試験を見事一発合格し、登録通訳士になりました。

それからは派遣センターから手話通訳の仕事を回してもらえるようになりました。

単発の仕事をこなしている内に、彼の評判はろう者の間に広がっていきます。

彼が日本語対応手話だけでなく、日本手話もできて気配りも利くからです。

 

ある日、荒井のもとに、法廷通訳の依頼が来ました。

被告人の菅原はろう者であり、日本手話も日本語対応手話もほとんど出来ませんでした。

彼は口話法も使えず、荒井は意思疎通に苦戦します。

そして簡単な会話をするだけでも難しいことから、菅原が警察や検察の取り調べで罪を認めた事実に疑念が沸きました。

実際に裁判が始まり、「あなたには黙秘権がある」という概念を菅原は理解できませんでした。

 

かつて荒井は、警察時代に一度だけ、ろうの被疑者の通訳として、取り調べの調書を本人の前で読み上げて確認したことがありました。

被疑者の名前は門奈哲郎。

彼は娘を預けていたろう児施設の理事長を殺害した疑いがかけられていました。

警察は自首してきた彼とコミュニケーションが取れないことから、勝手に調書を作り上げてしまいました。

荒井はその最後の確認作業として呼ばれたのです。

調書には不自然な所がありましたが、自分の立場ではその場で逆らうことが出来ず、荒井は門奈が調書の内容を認めたとサインしました。

荒井は警察のやり方に納得がいかず、それを胸に抱えたまま後悔し続けていました。

 

 菅原が黙秘権を理解できていないことを裁判官に認めさせた荒井は、そのまま菅原の生活を立て直すための活動にも協力することになりました。

 そんな中彼は、17年前に有罪判決を受けた後に出所した門奈が、今現在再び殺人事件の容疑者として警察に捜索されていることを知ります。

 しかも被害者は当時殺害された被害者の息子です。

 

 どうやら17年前の事件は、単に門奈と被害者がろう児施設の運営のやり方で揉めただけではなかったようです。

 

 「裁判 画像」の画像検索結果

 

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<まとめ>

主人公の荒井は、ろう者の両親とろう者の兄の4人家族でした。

その中で彼は唯一の聴者として育ち、小さい頃から手話で会話することが日常的だったために、日本手話も日本語対応手話も高いレベルで習得していました。 

彼は家族と周りの聴者との通訳の役割を自然と任されてもいました。

 ろう者のことも聴者のことも分かるが今一つ仲間になり切れないという彼のその立場は、両者を中立性な視点から描くことに貢献しています。

 

多くの小説や映画・ドラマでは「障害者はかわいそう」「でも頑張っている」という切り口で描かれがちです。

しかしこの小説はそういう安易な視点では描かれていません。

ろう者の世界を舞台としつつ、きちんとミステリー作品としての構造を持っています。

 

内輪だけではなく、どんな読者でも共感できる内容になっています。

 

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