【マンガ】『五百年目のマリオン』全2巻―孤児が舞台女優へ
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『五百年目のマリオン』日笠優 / 徳間書店
⇧2017年11月に2巻が出て完結しています。
<1940年のフランス>
この漫画で描かれる時代(1940年)は、第二次世界大戦の真っ最中です。
ヨーロッパの国々は、ヒトラー率いるドイツ軍に次々占領されていきました。
ドイツは1939年のポーランド侵攻を皮切りに、1940年にはデンマークとノルウェーにも侵攻します。
その2ヶ月後にはフランスにも侵攻してきて、ドイツの占領下に置かれることになります。
ドイツとフランスの戦争が始まるまでは、男性が兵役で取られてしまう以外は、パリでもそこまで治安は悪くなかったようです。
空襲警報はときどきあるけれど、誤報ばかりで実際に空襲を受けることはありませんでした。
市民もニュースで世界情勢が危険な方向に進んでいることは知っていましたが、戦時中の日本のようにガチガチに娯楽が禁止されているわけでもなかったのです。
条件を満たせば、演劇のための劇場を営業し続けることも可能でした。
さすが「芸術の都」といえます。
パリ市民の戦争に対しての危機感が薄かったとも言えますが・・・。
ちなみにドイツに占領されてからは、強制労働やユダヤ人の迫害が日常化し、ドイツ軍や頼りないフランス政府に抵抗するレジスタンスも活動するようになり、治安は一気に悪くなります。
この漫画は、ドイツに占領される直前のフランス・パリでの物語です。
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<あらすじ>
舞台は1940年のパリ。
14歳の少女・マリオンは、子どもたちだけの窃盗団のリーダーとして毎日を送っていました。
彼女には仕事も家もなく、街の死角で野宿生活をしています。
生きていくためには、食べ物を盗むしかなかったのです。
元々はマリオンは、父親に捨てられて孤児院で育てられました。
彼女には小さい頃から、歌手になるという夢がありました。
ある日、バイト先の酒場の客に
「パリに行かない?歌手を捜しているんだ」と言われます。
若くてやる気のある、ナイトクラブで歌える女の子が必要なのだと。
孤児院のシスターにも許可をもらい、マリオンはパリに行くことに決めました。
孤児院の子どもたち全員の期待を背負った旅立ちです。
マリオンが夢を叶えることは、孤児院の皆に勇気と希望を与えることになるからです。
しかし、男に連れていかれたのは、未成年の売春施設でした。
マリオンも孤児院のシスターも騙されていたのです。
ちょうど警察のガサ入れがあり、彼女はスキをついて施設から逃げ出しました。
大きな期待を背負って出て来たので孤児院に戻るわけにもいかず、
それ以降、窃盗を繰り返して生きるホームレスになったのでした。
ある日、鼻歌を歌っていた彼女の隠れ家に、アーロンという男がやって来ました。
彼は作曲家で、ミュージックホール「ドーリオン」の新しい歌手を捜している最中でした。
ドーリオンは老舗の劇場です。
マリオンの歌声を聴いたアーロンは、彼女に「ジャンヌ・ダルクの役で舞台に立ってみないか?」と提案しました。
マリオンは、過去の騙された苦い経験から一度は断りましたが、孤児院の皆の期待を裏切るわけにはいかないと思い直し、ドーリオンにやって来ます。
彼女を舞台歌手にするという話は本当でしたが、裏ではアーロンを含めた劇場の従業員たちによる別の計画も進行していました。
劇場の支配人は、「ジャンヌ・ダルク」を軍と協賛したプロパガンダに仕立て上げようとしていました。
つまり国民の戦意発揚のための演目です。
支配人以外は、そんなものは芸術ではないと考え、演目をなんとか止めさせようとしています。
その方法として、公演初日に舞台のセットを事故に見せかけて天井から落とし、舞台女優に犠牲になってもらうことにしました。
なんとマリオンは、その舞台女優の身代わりに選ばれたのです。
果たして、マリオンの運命は?
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<こだわり抜かれた画面>
戦争に端を発した悲劇の物語です。
孤児院で育った少女が夢を叶えるために、何度も騙されながら諦めずに踏ん張る姿が、健気で涙を誘います。
劇場の外では戦争が間もなく本格化しようとしていますし、
劇場の中では公演初日という破滅に向かってマリオンは進んでいきます。
一見、救いのない設定に思えますが、最後はキレイにまとまっています。
あと、全ページに渡って、絵が非常に丁寧で細かく描かれています。
しかも1ページあたりのコマ数が、現在の漫画よりも多いです。
(1ページ10コマ以上ある漫画は、今ではほとんどありません。それが連発されているのです。)
手塚治虫の時代に近い数です。
しかも絵のクオリティは高く、1コマたりとも手を抜いていません。
恐ろしくこだわり抜かれた画面です。
かなり手間がかかっており、絵を眺めているだけでも楽しめます。
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