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【小説・SF】『天冥の標』Ⅰ―神のいないノアの方舟

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ』小川一水 / 早川書房

⇧1巻は2009年発売。

2019年2月に10巻が出てついに完結しました。

10年がかりで書かれた超長編SFです。

すべて文庫版です。

夏休みはこういう長い小説に挑戦してみるのに最適です。 

 

 

<神のいないノアの方舟>

 「ノアの方舟」をご存じでしょうか。

 旧約聖書に登場する大型船です。

人間の堕落に失望した神が、地上に洪水を起こして人類をほぼ絶滅させます。

助かったのは、予め洪水を起こすことを神に知らされていたノアとその一族たちです。

ノアは大きな船を作り、洪水が起きたときにはその船に乗り込んでいたから生き延びることができました。

他に船に乗っていたのはあらゆる動物たちのつがいだけです。

他の人間たちは乗っていません。

船に乗れるのは人数制限があるので、ノアには助ける人と見捨てる人を選択することができなかったということでしょうか。

 

この小説ではノアの方舟と同じような状況が描かれています。

方舟にあたるのは宇宙船です。

ただし神はいません。

つまり誰が船に乗れる権利を持つのかは、人間(大統領)が決めます。

 

人々はまもなく地上が終わりを迎えることを知りません。

大型の宇宙船があることは知っていますが、その宇宙船が飛べることを知りません。

飛べることを知っている一部の者たちも、宇宙船がいつ飛び立つのか知りません。

乗船できる権利は権力者たちから配布されていきますが、本当に全員が乗れるのかは未知数です。

 

船に乗せてもらえずに残された人々は、船が出発した後の世界で生きていけるか分かりません。

船に人数制限があろうと、自分だけは助かりたいと考えるのが人間です。

争いが起きないはずがありません。

 

神は残酷なことをやるものですが、神が不在だったとしても結局残酷なことになるのですね。

 

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<あらすじ>

 西暦2803年。

舞台は地球から遠く離れた惑星・ハーブC。

人類がその星に入植してから300年が経とうとしていました。

その間に人類が植民地として開拓できたエリアをメニー・メニー・シープと呼びます。

 (※大陸の形が羊の群れに似ていることに由来)

 

300年前に人類は宇宙船シェパード号に乗ってやってきました。

そのときに宇宙船は手ひどく損傷してしまい、多くの乗組員が死亡し、貴重なハードウェアとソフトウェアが失われました。

そのため他の植民地惑星と連絡を取ることができず、救助が呼べなくなりました。

ハーブCには海と酸素はありましたが化石燃料がなかったため、電気を作り出すことができません。

シェパード号の巨大発電炉だけが唯一の電気供給源であり、それを掌握しているのが植民地臨時総督のユレイン三世です。

 

電気なしでは現代文明を維持するのは難しいので、民衆は総督のやり方に渋々従うことになります。

最近になって総督は発電炉の不調を訴え、各都市への電力配分を減らし始めたことで、民衆は不満を持つようになってきました。(本当に不調なのか、どの程度不調なのか尋ねることさえ許されないためです。)

 

メニー・メニー・シープの東端の町・セナ―セーに住む医者・カドムは、船乗りの一族の頭領の息子・アクリラと友達です。

彼らはただでさえ少なくなった電力供給を、総督がさらに削減しようとしていることを知って不審に思います。

色々と調べていくうちに発電炉の不調はウソであり、総督が削減した電力を使ってシェパード号を本格稼働させ、地球に向けて飛び立とうとしていることが分かってきます。

 

表向きは地球に救助を求めて戻ってくるという計画ですが、戻ってくるのは早くて50~100年後になる計算です。

その間シェパード号がないメニー・メニー・シープでは使える電力もないので、残された人々は生きていけるか分かりません。

つまり乗船できなかった者にとっては、ほぼ死刑宣告と変わらないということです。

 

カドムとアクリラは仲間とともに総督のいる首都に攻め込み、シェパード号離陸計画を阻止しようとします。

 

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<まとめ>

 大長編の序章です。

ノアの方舟計画は壮大ですが、それすら次巻以降への前フリに過ぎません。

 

ハーブCという地球から遠く離れた惑星が舞台であり、入植した人間たち以外に原住民たちも登場します。

全身に鱗がある人型の獰猛な怪物<咀嚼者(フェロシアン)>。

 同種間で高い共感能力をもつ<石工(メイスン)>。

主人公の友人アクリラは環境適応のために自らの肉体を改造した人々<海の一統(アンチョークス)>の末裔です。体内に大量の電気を溜めこみ、二酸化炭素を分解するので酸素呼吸を必要としません。

 総督の勢力と反対派であるカドムたちの対立を軸に、上記の彼らも戦いに参加します。

 

登場人物は多いですが、不思議と混乱はしません。

それぞれのキャラの個性が明確だからでしょう。 

実力のある作家ならではの書き分けの上手さですね。

 壮大なSFファンタジーの開幕です。

 

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