【絵本】『おぞましい二人』―大人のための絵本
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『おぞましい二人』エドワード・ゴーリー / 訳:柴田元幸 / 河出書房新社
⇧2004年出版。
電子書籍版はありません。
<著者について>
エドワード・ゴーリーという絵本作家をご存知でしょうか。
知る人ぞ知る、世界中にその作品のコレクターが存在するカルト的作家です。
本名の他にも多数のペンネームを用いて作品を発表しています。
そのペンネームは「Edward Gorey」のつづりを入れ替えて作られたアナグラムになっています。
小説家の挿絵や舞台美術を担当していたこともあるそうです。
絵本作品の特徴としては、ハッピーエンドなど鼻で笑うかのような悲劇的な物語が多く、登場する子どもたちは大抵不幸な目にあったり死んだりします。
例えば『ギャシュリークラムのちびっ子たち』という作品では
A~Zまでの26人の子どもたちが、1ページごとにアルファベット順に様々な方法で死んでいくというだけの内容です。
⇧2000年出版。電子書籍版なし。
決して楽しい話ではありませんが、不条理を淡々と描いているので陰鬱な印象とショックを受けつつも、なぜか引き込まれる作品になっています。
また、『不幸な子供』という作品は、主人公の少女がひたすら不幸な目に合い続けるという話です。⇩
⇧2001年出版。電子書籍版なし。
著者は子供に何か恨みでもあるのかというくらい、子どもたちを不幸にしていく傾向にあります。
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<あらすじ>
ほとんどの絵本は著者の創作ですが、この『おぞましい二人』という作品は現実に起こった事件をもとに描かれています。
「ムーアズ殺人事件」と呼ばれ、イギリスのサドルワース・ムーアという地域で1960年代に起きた連続殺人事件です。
ある夫婦が共同で10代の少女たち5人を殺害したのです。
この本ではその夫婦の幼少期から警察に捕まって死ぬまでの経緯が描かれています。
5歳のとき、ハロルド・スネドリーは小動物を石ころで叩き殺しているところを見つかりました。
同じ頃、モナ・グリッチは酒浸りの両親から生まれました。
学校を卒業するとハロルドはしばしば書店で万引きしました。
モナは雑貨屋で働き、商品を不良品に変えて客の反応を楽しんでいました。
二人は自己啓発系の講演会で出会い、付き合うようになります。
何年後かに、二人は人里離れた別荘を借りました。
そこからターゲットの少女を誘拐して、最終的に二人で殺害し、翌日には荒野に埋めることを繰り返します。
長年、二人の犯行は怪しまれることはありませんでした。
しかし殺害時に撮影した写真を電車内でポケットから落としてしまい、警察に捕まることになりました。(現実の事件では、実際は犯行に身内の共犯者を誘ったために、警察に密告されて事件が発覚しました。)
その後、二人は裁判で有罪となったが、精神異常と判定されました。
彼らは二度と会うことはなく、それぞれが獄中で死を迎えました。
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<まとめ>
驚くほど救いのない話です。
発表当時はイギリスで非難の嵐だったそうです。
多くの書店からは「ウチには置かない」といって出版社に大量に返品されてきたとか。
まあ、そういうものこそ好奇心旺盛な者は読んでみたくなるわけですが・・・。
ちなみにこの作品の主人公たちの名前は実際の犯人たちのとは違うし、犯人たちの死に方など部分的に著者が創作したものも描かれています。
絵についていえば、執拗に白い部分をなくそうとして線で埋められた画面は情報量が多く、読者を流し読みさせません。
絵の一つ一つをジックリ見てしまうことになるので、読者はいつの間にか最後のページまで作品世界から逃れられなくなります。
怖くておぞましい絵柄なのですが、「なぜか見ちゃう」のです。
不思議です。
絵本は一般的に子どものためにあると思われていますが、これは大人でも楽しめるし、大人だからこそ深く理解できる内容になっています。
むしろ「大人のための絵本」と言った方がいいかもしれません。
※絵本だからといって、エドワード・ゴーリー作品はプレゼントには向いていません。
ネタとしてならOKかもしれませんが。
オリラジの中田さんは、若手の頃にファンからこの本をプレゼントされて困惑したそうです。普通、そうなります。
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