【マンガ】『レッド・ベルベット』1巻―マンガで読む海外ドラマ
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『レッド・ベルベット』多田由美 / 講談社
⇧2019年4月23日発売。大きめサイズのコミックです。
<著者について>
「多田由美」という作家をご存知でしょうか?
マンガ家であると同時にイラストレーターでもあります。
神戸芸術工科大学の准教授もされています。
知名度はあまりありませんが、1986年にデビューして以来、多くの作家に影響を与えたと言われています。
その証拠に、この『レッド・ベルベット』1巻の帯には
羽海野チカ、オノ・ナツメ、おかざき真里、
江口寿史、寺田克也、村田蓮爾、上條淳士、皇なつきなど
現在第一線で活躍しているマンガ家やイラストレーターからの推薦文が寄せられています。
ここまでの人数に推されている帯はほとんど見かけません。
一般人にはあまり知られていなくても、同業者からはカリスマ的な存在のようです。
これまでに発表された作品は短編が多く、この『レッド・ベルベット』が一番の長編になるみたいです。
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<あらすじ>
舞台はロサンゼルス。
主人公は高校生のアールとランディ。
彼らは幼馴染で、家も隣同士です。
物語はアールの小さい頃に、母が亡くなるシーンから始まります。
パティシエだった母の店にアールが訪ねていったところ、母が倒れていてそのまま還らぬ人となったのです。
当時から現在に至るまで、アールの父はその現実を受け止めきれず、アールの母の思い出の品を家から全部処分してしまいます。
アールの手に残った母の思い出の品は、ケーキの作り方をまとめたレシピ集のみ。
所々、歯抜けになっているレシピを探し出すことに夢中です。
ある日そのレシピ集が父に見つかり、捨てられてしまいます。
ランディの母は病気で入院中です。
父は時々ランディに暴力を振るいます。
ランディの叔父は窃盗団を結成していて、ランディにもその片棒を担がせようとしてきます。犯罪に手を染めるのは嫌なランディでしたが、不良仲間から脅迫されて渋々窃盗部隊に加わります。
「もうやりたくない」と叔父に訴えるランディでしたが、すんなりと認めてもらえずに悩んでいました。
アールもランディも独りよがりでワガママな大人たちに振り回され悩みながらも、お互いに励まし合ってなんとか生きています。
彼らが笑顔になれる日は来るのでしょうか。
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<まとめ>
独特のテンポ、リズムを持ったマンガです。
海外ドラマを観ているかのような気持ちになりました。
雰囲気は日本のどのマンガとも似ていません。
オノ・ナツメ作品がやや近いかも。
決して手癖で描かれていない、計算された端正な線が素晴らしいです。
無駄な影や背景の線もないので画面がキレイで見やすく、絵の上手さがより鮮明になっています。
イラストレーターでもあるからか、任意の1コマを切り取ってもそれだけで独立した存在感を放っています。マンガであると同時にイラスト集の要素も兼ね備えているのです。
さらにモノローグもナレーションもありません。
言葉による心理描写が一切ないのです。
これは現在の日本のマンガでは考えられない表現ではないでしょうか。
マンガは上手い作家ほど絵だけで状況を説明しています。
やたらと言葉を挿入すると画面が汚く見づらくなることが分かっているからです。
一概には言えませんが、言葉で説明しなければ分からないのは、その作家の絵や演出や構成やカメラワークが下手だからという理由が一番大きいはずです。
そしてこのマンガでは、セリフ以外に説明文は存在しません。
絵や文脈から状況やキャラクターの心理が分かるように計算されて描かれているのです。恐るべき技術です。
絵と会話と人物の表情だけで全部説明している凄さをこれ以上どうやって説明すればいいのか分かりませんが、著者がマンガ表現に精通していることは確かです。
マンガの真髄を極めていると言えばいいのでしょうか。
「なんかいつもと違うマンガが読みたいけど、奇をてらったものじゃなく安定感のある物語がいいなあ」と思っているワガママな読者にも対応可能な作品です。
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