【マンガ】『うたかたダイアログ』1巻―選び抜かれた言葉のチョイス
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『うたかたダイアログ』稲井カオル / 白泉社
⇧2017年7月発売。
(2019年1月発売の3巻で完結)
<内容紹介>
マンガの「ラブコメ」というジャンルにも、
大きく分けて「ストーリーもの」と「ギャグ」の2種類があります。
この『うたかたダイアログ』は後者です。
ストーリーはあって無いようなもので、主人公の宇多川あずさと片野優太の日常会話のやりとりが描写されています。
彼らは高校生のアルバイトとして、ドラッグストアで働いています。
二人は付き合っているわけではなく、お互いにちょっと気になっている程度です。
ラブコメではありますが、コメディの割合の方が多めです。
タイトルの「うたかた」は、宇多川と片野の略でしょう。
(「泡」の意味もあります。)
ダイアログとは「対話・会話」の意味です。
シンプルで、内容を上手く表現した良いタイトルですね。
著者が大阪出身のためなのか(?)、何気ない会話であっても、漫才のようなボケとツッコミを意識した言葉のチョイスにこだわりを感じます。
ほとんどのマンガは読者に買ってもらうため、あるいは目にとまるように、
非常に気合を入れて表紙の絵が描かれています。
そのため中身の絵のクオリティが、表紙から格段に落ちてしまっている作品もときどき見られます。
しかしこのマンガは、むしろ中身の方が絵が綺麗に見えます。
珍しいパターンです。
もちろん表紙の絵は上手いのですが、線が丁寧で綺麗なのでモノクロになるとそれがより際立つからでしょうか。
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<ギャグマンガは描くのが難しい>
ストーリー漫画よりもギャグ漫画の方が描くのが難しいと言われています。
1話分を描くのに要求されるアイデアの量が違うからでしょう。
ギャグ漫画の方がページ数が少なめとはいえ、連載なら毎週毎月死ぬほどのアイデアを出す必要があります。
『バクマン』でもシュージンが苦しんでいましたね。
うすた京介さんのように圧倒的な才能がなければ、すぐにアイデアが枯渇して打ち切りになってしまいます。良くて一発屋です。
少女マンガのギャグを描くのは、少年マンガや青年マンガよりもさらに難しいと僕は思います。
少年マンガだと困ったら「うんこ」とかの万人ウケが狙える下ネタを使えますが、
少女マンガはあまり下品なネタを使うと読者に引かれてしまいます。
さらに絵がキレイであることが大切で、画面が汚くならないように配慮しなければならない暗黙の制約があるように見えます。
これは相当なハンデです。
それでも果敢にギャグで勝負しようとしている著者の姿勢が勇ましいです。
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<女の言う冗談は面白くない?>
たまに「女の言う冗談で笑ったことがない」とか、
「女の話は面白いと思ったことがない」という意見を聞きます。
関西では笑いにシビアなので、そういう(強がり)発言をしてしまうのかもしれません。(お笑い好きの人には、「他人の言う事で笑ったら負け」という謎のプライドがあるのです。)
たとえそうだとしても、それは仕方のないことだと思います。
社会的な役割として、女性は特に「面白さ」を要求されていないからです。
逆に男性は、「外見の美しさ」を女性よりも要求されません。
(男性は仕事に行くのにメイクをしろと言われることはない。)
将棋の棋士や漫才師に男性が多いのは、男性の方が頭がいいからでも面白いからでもなく、もともとそれになろうと思う女性が少ないからです。
保育園の先生には女性が向いているのではなく、そういう社会的なイメージが根付いてしまっているため、もとからなろうと考える男性が少ないからです。
本質的には「なり手の数」の問題なのですが、性差に関する偏見がそれを見えなくしているのです。
各分野での注目の人物がメディアで取り上げられたりして、イメージは強化され、偏見が修正されることはまずありません。
そういったバイアスに流されないようにしたいです。
そういう偏見の中で「ギャグの面白さ」で勝負しようとする女性には、ハンデがあるのです。
男性が誰かを本気で笑かそうとしてスベったとしても、
「しょうもないギャグを言ってスベっている奴(苦笑)」で済みますが、
女性が誰かを本気で笑かそうとしてスベったら
「しょうもないギャグを言う痛い奴、寒い奴、絡みづらい奴、空気の読めない奴」
という評価に簡単になってしまいがちです。
男性なら誤魔化すことが許されているのに、女性なら「なんか可哀そう」と思われます。
これは相当なハンデです。
次から失敗できないからです。
どうにか出来ないものでしょうか。
何が言いたいかというと、要は少女マンガでもギャグ漫画が流行ってほしいということです。
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