【ビジネス】『ザ・プロフィット』—ビジネス書は出た瞬間に読むべきか
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『ザ・プロフィット』エイドリアン・スライウォツキー / 訳:中川治子 / ダイヤモンド社
⇧2002年発売。
<ビジネス社のヒット作>
この『ザ・プロフィット』は、
エリヤフ・ゴールドラットの『ザ・ゴール』が前年(2001年)に大いに売れたから、
二匹目のドジョウを狙うためにデザインをやや似せて作ったと思われます。
同じ出版社であるビジネス社から出ています。
しかし著者は別人です。
『ザ・ゴール』を当時読んだであろう現在30~50代の方が
「ボトルネック」とか「全体最適化理論」とかを口にするたびに
「ああ、この人もあの本読んだんだな~」と思っています。
しかし、 この『ザ・プロフィット』のカバーデザインが『ザ・ゴール』に似ているからといって、内容まで二番煎じというわけでは決してありません。
全然違います。
どちらも小説形式で、先生と生徒役の会話(やりとり)を通して、知識をわかりやすく説明してある点では同じですが、テーマは別です。
『ザ・ゴール』では工場の製造ラインを例にとって、「部分最適」ではなく「全体最適」を目指せという話でした。
『ザ・プロフィット』では企業が利益を出しているパターンを23個提示して、自分(自社)のやりたいビジネスや扱っている商品がどうしたら利益が出せるようになるか、どの分野はどういう利益モデルが有効なのかが語られています。
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<ビジネス書は出た瞬間に読むべき?>
17年前に日本で発売された本なので、内容が現在でも通用するのか不安でしたが杞憂でした。
そもそも、文学に限らずビジネス書にも古典的名作というものがあり、それらさえ全部読んでいれば現代に刊行される本など読まなくていいという説すらあります。
理論の抽象度を上げていけば、普遍性も高まるというわけです。
この本では具体例もそこそこありますが、抽象的な説明も半分以上あるので、時代を経ても古びない内容を著者が予め目指して書こうとしたということでしょう。
ビジネスの世界は移り変わりが早いから、発売された瞬間に読まないと内容が古びてしまって使えなくなるという説はウソです。
古典物理学であるニュートンの万有引力は、最先端の量子力学の前では通用しなくなりますが、だからといって無価値ではないのと同じです。
現在ではほとんど通用しなくなった理論でも、それを知っていることで、ふとしたときに何かの武器になるかもしれません。
最新の理論しか知らない状態というのは、薄っぺらくて深みがなく、さらなる変化に対応できない脆弱さがあります。
ダーウィンの進化論にもあるように、多様性を持たないものは、進化の過程で淘汰の圧力(つまり環境の変化)に耐えることができないということです。
要は、ビジネス書は新刊ではなくなっていても、読む価値はあるということです。
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<まとめ>
ビジネス書に限らず、本は発売されたときに読むべきものではなく、
そのときの自分の知識や理解度と相談して読む時期を選択すべきです。
全く意味がないとは言わないけれど、新社会人がいきなり労務管理の本を読んでも実感がわかずピンとこないでしょう。
ピンとこないものを、「新刊だから」「話題だから」で読むのは意味がありません。
この『ザ・プロフィット』は学生時代に読んだとしても、自分はよく分からなったと思います。
とはいえ、本の内容は「市場シェア」や「コスト」などに多くページを割かれていて、ITの技術革新による生産性の急上昇については少し触れられている程度です。
出版された2002年といえば、Amazonもまだ今のような「何でも屋」ではなく、
「書籍とDVDがメインのネットショップ」といったレベルだった気がします。
この時はスマホなんて存在せず、インターネットがビジネスに与える影響がまだまだ過小評価されていたことが分かって面白いです。
時代が急激に変化していったことが実感できます。
現在のビジネスシーンのスピード感を理解する上で、昔のビジネス書を読むのは最適な方法なのではないかとすら思いました。