【マンガ】『ミステリと言う勿れ』(2巻)―なぜ人を殺してはいけないか
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『ミステリと言う勿れ』田村由美 / 小学館
⇧『このマンガがすごい!2019』オンナ編で第2位獲得。
3巻がAmazonで売り切れていました。
<あらすじ>
カレー大好きの大学生の主人公・久能整(くのう・ととのう)。
カレーが作れてさあ食べようかというときに、いつも事件に巻き込まれてカレーが食べられずに嘆くことになります。
ある日、彼は美術館に行くために出発寸前のバスに駆け込みます。
運悪く、そのバスではバスジャックが起こりました。
犯人の目的が分からないまま、奇妙な尋問が始まります。
まずは乗客全員に自己紹介と自分の欠点をしゃべらせます。
フリーター、主婦、元大企業の重役、町工場の事務員、無職の男・・・。
お互いに知人でもないし、何か共通点があるわけでもありません。
さらに犯人は「なぜ人を殺してはいけないか」という問いを乗客に投げかけます。
もちろん色んな回答が出て来ます。
答えられない者。
「そんなの当たり前だ」と叫ぶ者。
「他人にされて嫌なことは、他人にするな」、
あるいは、「残された人が悲しむから」と答える者。
犯人は乗客たちの何かを探っているようです。
それが何なのか分からないまま、犯人の住処である豪邸に連れていかれます。
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<主人公の一人語りマンガ>
タイトルからして、正統派ミステリーではないのは明らかです。
「こんなのミステリーじゃない」と言って怒り出す頭の固い読者がいるかもしれませんが、「タイトルで最初からそう言ってるでしょ」って話です。
それでも変化球のミステリーであることは確かです。
まあ、何か奇妙なトリックが仕掛けられている事件など起こりませんし、
主人公が探偵役として積極的に謎を解明していく話でもありません。
一言でいうなら、主人公・整がひたすらマイペースにしゃべりまくるマンガです。
しかしそれがメチャクチャ面白いんです。
犯人も容疑者たちも、警察関係者たちも、彼の周りで彼の話を聞いた人たちは、全員話にくぎ付けになってしまいます。
読者も一緒にセラピーを受けている気分になります。
犯人はその話に翻弄されてついボロを出してしまい、事件が終息するという展開です。
一人語りが面白過ぎて、意外な犯人はオマケのような印象になりかねません。
犯人だけでなく乗客一人一人に、それぞれの悩みを少しずつ和らげていくようなアイデア・考え方を提案していきます。
特にナルホドと思ったのが、イジメられていた過去を引きずる青年に対して示した、
「イジメられた者ではなく、イジメる者こそが病んでいる」という考え方です。
だから欧米ではイジメた者にセラピーを受けさせるのだとか。
日本ではイジメられた者がセラピーを受けますが、逆なんですね。
確かにそのとおりかもしれません。
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<バスジャックの問い>
「なぜ人を殺してはいけないか」という問いに対して、整はこう答えました。
「殺してはいけないってことはないんです。
いけなくはないんだけど、ただ、
秩序のある平和で安定した社会を作るために便宜上そうなっているだけです。
今は殺しちゃいけないってことになってますけど、
ひとたび戦時下となれば、いきなりOKになるんですよ。
それどころか、たくさん殺した方が誉められるって状況になる。
そんな二枚舌で語られるような、適当な話なんですよ。
だから(バスジャック犯である)あなたも、そういう所へ行ったらいいと思います。
ただしそういう所では、あなたもさくっと殺されます。
あなたが今殺されないでいるのは、
ここにいるのが秩序を重んじる側の人たちだからです。
もし、そういう所には行きたくない、自分は殺されたくない、
自分だけが殺す側にいたいとか思うなら、それはまた別の話です。
それは単に人より優位に立ちたいとか、人を支配したいとか、いたぶったら心地いいとかそういう話で、つまり劣等感の裏返しだからです。
コンプレックスの裏返し、それだけの話です。
どうして人を殺してはいけないんだろう・・
なんてレベルの話じゃ、そもそもないんですよ。」
小学生から中学生くらいまでの間に、この「なぜ人を殺してはいけないか」という問いについて考える人は多いと思います。
ニヒリストぶってカッコつけたい年頃でもあります。
だから「別に殺してもいい」という結論をドヤ顔で口にする少年も一定数います。
彼らはルール無用の弱肉強食の世界をまだ想像できないのでしょうね。
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