【小説】『刀と傘』―司法卿探偵・江藤新平【このミステリーがすごい2020・第5位】
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『刀と傘 明治京洛推理帖』伊吹亜門 / 東京創元社
⇧2018年11月発売。
『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第5位にランクイン。
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【小説】『刀と傘』/ 司法卿探偵・江藤新平【本のおすすめ紹介】
<幕末ミステリー>
江藤新平という人物をご存知でしょうか。
維新十傑の一人で、王政復古の大号令を行った佐賀藩士です。
明治政府が出来てからは政治の中枢にいて、最終的には司法卿となって司法制度の整備に大きく貢献した人物です。
彼がこの小説の主人公の一人であり、探偵役でもあります。
「江藤新平」という字面が、
「江戸川コナン」と「工藤新一」と「山口勝平(新一の声優)」の組み合わせで出来上がるのは果たして偶然でしょうか?
この小説は幕末の京都を舞台としたミステリーです。
19世紀以前の日本を舞台としたミステリーだと、
身の回りにどこにでも時計があるわけでもないし、司法解剖があるわけでもないので、確固たるアリバイや厳密な死亡推定時刻が分かりません。
凝ったテクノロジーを使ったトリックも使えません。
科学捜査もまだ存在しないので物的証拠が有効とはいえず、状況証拠で犯人を絞っていくしかありません。
だから、どうやって殺したか(ハウダニット)や、誰が殺したか(フーダニット)よりも、なぜ殺したか(動機)がメインの謎であり、物語の肝になります。
現代社会ではありえないけれど、昔ならば十分納得しうる殺人動機・行動理由というのはいくつも存在します。
説明されれば「ああ、なるほど」と思うのですが、現代に生きる我々にはなかなかそれに気づけません。そこが過去を扱うミステリーの醍醐味です。
例えば『元年春之祭』などは、解説されるまで犯行の動機は絶対に見抜けないでしょう。
⇧『このミステリーがすごい!2019』海外編・第4位。
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<あらすじ>
舞台は幕末から明治へ移り変わる時期(1867~1873年)の京都。
大政奉還が実施されたものの、新政府の地位や権力が盤石とは言い難く、旧幕府側の人間は巻き返しを図ろうと画策しているので、京都はまだまだ治安が悪い場所です。
新政府の中でも尊王攘夷派か開国交易派かで別れており、対立勢力の有力人物を暗殺する裏工作は日常茶飯事です。
尾張藩代表の一人として新政府に登用された鹿野師光(かの もろみつ)は、ボロ長屋に住む友人の五丁森了介を訪ねました。
五丁森は英語も堪能な異国の事情に詳しい開国推進派でしたが、攘夷派にその存在を疎まれており、暗殺されないように鹿野をはじめとした数人の友人にしか自宅の場所を明かしていませんでした。
外を気軽に歩けない彼は、三条実美(さねとみ)に紹介してもらった男を鹿野に自宅にまで連れてきて欲しいと頼みます。
その男こそ、佐賀藩士・江藤新平です。
佐賀藩は早い時期から西洋技術を導入しましたが、その強大な軍事力を政治の道具として使いませんでした。
他の藩との交流を一切断ち、中央政局に対しても一歩置いた姿勢を取り続けたため、いざ明治政府が誕生すると、薩摩長州がメインの権力中枢に食い込みづらい環境になっていました。
その状況を打破するために江藤が佐賀藩代表として派遣されてきたのです。
後日、鹿野は江藤と無事に顔合わせを済ませ、五丁森の長屋へ向かいました。
しかし五丁森は自宅で何者かに殺されたあとでした。
血の乾き具合から見て、殺されたのは昨晩だと推測されます。
しかし昨夜は雨が降っていたにもかかわらず、犯行現場の畳には土足の足跡がありません。まさか暗殺者がわざわざ靴を脱いで家に上がるはずもありません。
そもそも、五丁森の自宅は数人の友人しか知りません。
つまり犯人は五丁森の顔見知り—鹿野の友人の内の誰かだということです。
江藤は有力者たちとのコネが多い五丁森に協力してもらって、佐賀藩の名を上げていこうと考えていましたが、その計画はアテがはずれた形になりました。
そして今度は、犯人を見つけて事件を解決することで、自分の名前を新政府に売ろうと考えます。
ピンチはチャンスということです。
江藤と鹿野は容疑者たちのアリバイを探るべく、二人で捜査を開始します。
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<まとめ>
この小説は5話収録の連作短編です。
主人公が江藤新平と鹿野師光の二人なのは変わりませんが、二人の関係性は話ごとに変わっていきます。
第一話で出会い、二話で協力関係を築き、三話のラストで決裂し、五話で手遅れながらも実は相手を憎み切れていなかったという関係が判明します。
密室トリックもあり、倒叙型ミステリーもあり、趣向が凝らされています。
犯行動機の意外性ももちろんですが、動機が二転三転して真の意味が判明したとき、物語に深みが増していきます。
表の理由とは別に、裏の理由にまで鹿野が思い至ったとき、江藤新平の恐ろしさが分かります。
幕末の京都は、こんな一筋縄ではいかない奴等でひしめいていたんですね。
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