【小説・青春】『トラペジウム』―アイドルになるための戦略
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『トラペジウム』高山一実 / KADOKAWA
⇧2018年11月発売。
<著者について>
著者は人気アイドルグループ・乃木坂46の高山一実さんです。
彼女は初期メンバー(一期生)の一人です。
最近では一期生メンバーのグループからの卒業が続いていますが、彼女はまだ現役で活躍されています。
つまりこの本は、多忙な毎日の合間に書かれた作品なのです。
作品内の主人公はアイドルを目指す女子高生です。
現役アイドルが、アイドルを目指す女の子を描いたというわけです。
現役アイドルだからこそ分かる視点や発想が垣間見えて、アイドルになることの難しさをリアリティをもって教えてくれます。
著者は湊かなえさんの全作品を読んでいると公言しています。
そのためか、なかなか人間の嫌な部分を描くのが上手いです。
嫌な表現の仕方といえばいいのでしょうか。
ジャンルは青春小説ですが、そこがアクセントになっています。
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<あらすじ>
主人公は、アイドルになることに憧れる高校一年生の東ゆう。
オーディションにも全部落ちた彼女は、それでもまだ夢を諦めきれませんでした。
彼女が次に考えた作戦は、仲間を集めて世間の注目を集め、メディアに取り上げられて人気者になって芸能事務所に入り、そこからアイドルへステップアップするというものでした。
仲間は、ゆうの住む地元周辺に通う女子高生の中から、特別キャラが濃くて可愛い女の子を選抜します。
彼女の名前に「東」が入っていることから、他のメンバーは「西南北」の高校から一人ずつ探し出すという計画を立てます。
つまり4人組のグループを作ろうとします。
アイドルを目指すというゆうの計画はふせたまま、まずはこれだと思った子と友達になるところから始めます。
そして以下の3人が選抜されました。
・南からは、お嬢様学校の華鳥蘭子。
…見た目も口調も全てお嬢様。テニス部所属。家にプールあり。
・西からは、高専に通う理系女子の大河くるみ。
…可愛い顔立ち。プログラミングが得意。ロボコンで全国2位。全国にファンがいる。
・北からは、小学校時代のクラスメイト・亀井美嘉。
…髪もネイルもいつもキレイに保っていて、美容に余念がない。ボランティア活動をずっとしている。
4人は徐々に仲良くなり、美嘉のボランティア活動の一環で小さい子に勉強を教えたり、登山に参加したりします。
そしてゆうは、地元の観光スポット・翁琉城にテレビの取材が入るという情報をゲットします。
そこでは、外国人観光客に通訳しながら城内を案内するというボランティア活動の仕事がありました。
テレビに映って取材されるチャンスだと見たゆうは、他のメンバーを誘ってボランティアチームを結成します。
ゆうの思惑通りにテレビの取材を受けることになり、それがきっかけでバラエティ番組に呼ばれるようになり、レギュラーになり、彼女たちが番組のエンディング曲を歌うという展開になりました。
しかしそこから、ゆう以外のメンバーたちがアイドル活動に拒否反応を示すようになっていきます。
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<まとめ>
タイトルの『トラペジウム』とはオリオン大星雲の散会星団のことです。
ラテン語で台形を意味するそうです。
4人組の女の子たちが光り輝くアイドルを目指すという意味でしょうか。
それとも、アイドルを目指す前から(あるいは目指さなくても)、彼女たちの人生は輝いていたということでしょうか。
アイドル活動が描かれるのは物語終盤だけで、ほとんどの部分は、アイドルになるまでのゆうの苦闘ぶりが描かれています。
有名になったら過去を暴かれるので、SNSもやらず、彼氏も作らないことを徹底しています。
学校生活で目立ったりいじめられたりしないよう、適度なあいさつだけは周囲にしつつ、友達付き合いもしません。(メリットのない人間とは関わらない)
アイドルとしてやっていくには、軽い覚悟ではダメなのです。
アイドルになる前から戦いは始まっているのだから。
ゆうは、キャッチ―なプロフィール作りにも余念がありません。
「東西南北からそれぞれ可愛い女の子が偶然(本当はゆうの計画のもと)集まって仲良しグループを結成した」というエピソードをデビュー前に作っておくことは、業界人や大衆へのつかみになると考えたのです。
あるいは過去に何をしていたか聞かれたら、ボランティア活動をしていたと言えば聞こえがいいから、乗り気じゃなくてもやろうとします。
こういうことは、バレたら「計算高い」などと非難されるかもしれませんが、誰だって成功するために作戦を立てるはずです。
自己プロデュース力のある人は、そういう戦略のもとで行動するというだけです。
しかも、そうしたからといって成功できるとは限りません。
青春小説ですが、アイドルになるための戦略論というビジネス書的な視点でも読めます。
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