【マンガ】『葬 はぶり』1巻―殺すことでしか救えない命がある
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『葬 はぶり』渡辺千紘 / マッグガーデン
⇧2018年11月発売。
2巻は2019年4月に発売されています。
<ヒーローもの>
ヒーローには2種類あります。
大衆に認知され応援されている者と、人知れず頑張っている者です。
現実世界のヒーローは有名で、皆から憧れられたり応援されたりする人が多い一方で、
フィクションの世界のヒーローたちは人知れず戦っている者がほとんどです。
現実世界ではマスコミが彼らを取り上げるからそうなるのでしょう。
フィクションのヒーローにも2種類あります。
功績が大衆にバレても賞賛されるだけの者と、非難されたり嫌われたりする者です。
少年マンガのヒーローたちはほとんど前者です。
『ドラゴンボール』の悟空は、地球にやって来たサイヤ人を人知れず命がけで倒しますし、『ワンパンマン』のサイタマも人知れず怪人を倒していきます。
これが世間にバレたところで、皆は感謝こそすれ、非難する人はいないでしょう。
しかし少数ですが、後者のタイプのヒーローも描かれています。
「誰もやりたくないけれど誰かがやらなくちゃいけないこと」をやってくれているのに、大衆は感謝どころか、それをやっている者を白い目で見たり非難したりするのです。
主人公はそれでも辞めることをしません。
自身のアイデンティティのためだったり、誰かから意志や役目を引き継いだからだったり、被害にあう人々を見て見ぬふりが出来なかったり、理由は様々です。
このマンガの主人公も、そんな哀しい宿命を背負って戦います。
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<あらすじ>
霊に憑りつかれた者を「凶憑き(まがつき)」といいます。
霊の憑りつき方には段階があり、初期状態ならば除霊で追い払うことができます。
霊が人間の魂の半分以上を侵食した状態になると、憑りつかれた人間は精神を崩壊させ理性をなくした暴徒と化します。
この段階になれば除霊によって霊を引きはがすことはできません。
この状態を「死相」と呼びます。
死相段階にまで到達した凶憑きを退治する専門職を「葬(はぶり)」といいます。
「葬」は賽河家で代々受け継がれてきた役割です。
一般人と違うのは、霊を自らの体内に取り込みながらも、お札で封印しているところです。
主人公の少年・賽河 柩(さいかわ ひつぎ)。
彼は詳細は知らないけれど、父の「葬」という仕事に憧れていました。
悪霊を退治する仕事だと思っていたのです。
気になった彼は、父を尾行してその仕事を目の当たりにします。
そして「葬」の仕事は悪霊退治ではなく、死相に至った人間を殺すことだと知ります。
そんな仕事を受け継ぎたくないと父に訴える柩でしたが、「俺だってやりたくてやっているわけじゃない。でも誰かがやらなくちゃいけないんだ」と諭されます。
ある日、友達と遊んで帰宅すると、父が死相段階に達していて、家族を皆殺しにしている場面に出くわします。
父の体内にいる霊の封印が解けてしまったのです。
定期的にお札を張り替えて封印を維持する必要がありましたが、お札の予備は柩が全部持ち出していたからです。
理性を少しだけ取り戻した父の指示に従い、柩は専用武器の「ギロチン包丁」で父の首を落とします。
それから7年後、柩は高校生「葬」として、放課後は死相に至った者を退治する毎日を送っていました
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<まとめ>
なんとも衝撃的な第1話です。
9歳の少年に、やむを得ないとはいえ父親殺しをさせるのですから。
普通の少年マンガなら悪霊退治の仕事を主人公にやらせるものですが、悪霊に憑りつかれて暴走した人間を殺す仕事をやらせています。
このマンガのキャッチコピーは「殺すことでしか救えない命がある」です。
殺さなければ、霊に憑りつかれた人間を救えないということです。
やっていることは少年マンガのバトルものなのですが、主人公の宿命がかなりハードです。
一見しただけでは主人公が暴徒を殺害しているように見えるので、意図を説明して理解してもらえたところで、皆が応援してくれるわけではないでしょう。
汚れ仕事を引き受けてくれているのに、だれも誉めないのです。
本当はそういう人こそ認められるべきなのに。
もどかしいですね。
現実世界でも「もっと評価されるべき」という人は大勢いるので同じですね。
哀しい宿命を背負った孤独なヒーローを描いた物語です。
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