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【小説・文学】『ヒッキーヒッキーシェイク』―不気味の谷を越えろ

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『ヒッキーヒッキーシェイク』津原泰水 / 幻冬舎➡早川書房

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⇧2019年6月6日発売。(文庫版)

なぜかハードカバー版は2016年に幻冬舎から出版されているのに、文庫版は早川書房から出版されることになったみたいです。

先日Twitterで出版担当者が「この本が売れなかったら自分は編集者を辞める」と宣言されていたので、気になって読んでみました。

 相当な自信作ということでしょうか。

期待値が上がり過ぎていると、どんなに面白いものでもイマイチに感じてしまうので、読む前は感情をフラットにすることをオススメします。

 

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<ジャンル分け>

小説は読む前にはどんなことが書かれているのか分からないので、

ジャンルが明確な作品は、比較的安心して読み始めることが出来ます。

読者が本を買うことをためらわないように(購入までの精神的ハードルを上げてしまわないように)、著者もジャンルは何となく想定して書いているものです。

 

しかしこの小説はジャンル分け不可能です。

文学というほど堅苦しくないし、青春小説とも言いきれず、SF的要素もあるけれど、ミステリー要素もあり、どうにもジャンル分けが難しい作品です。

ジャンル分けを拒否していると言ってもいいでしょう。

本来、小説はもっと自由なのだと訴えているかのようです。

売れる本を書くよりも、世界に意味のある一冊を生み出そうという著者の覚悟が感じられます。

 

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<あらすじ>

 心理カウンセラーの竺原丈吉(じくはら じょうきち=JJ)は、ひきこもりの若者たち相手に家庭訪問しながら、面談を繰り返していました。

彼の物腰は患者に優しくはあるけれど、ひきこもりを解消させようという意志は薄弱です。

むしろ仕事がなくなると困るので、「君には、出来ればずっとひきこもっていてもらいたい」と言う始末です。

 

彼はカウンセリングという名目で、彼の計画実現に貢献してもらえる優秀な人材を探していました。 

彼の計画とは、「不気味の谷を越えた人間づくり」です。

 

「不気味の谷」とは、人間に模したCGなどに関して最近では話題になる言葉です。

基本的に我々は、人間に似せようとして作られた人形やロボットに対して、その精度が高ければ高いほど好印象を持つものです。

しかし人間の外見に限りなく漸近していくと、人間に似ている部分よりも似ていない部分を探すようになります。

そして人は、あるポイントで非人間的要素を強く感じ取ってしまい、「なんか気持ち悪い・怖い」と思ってしまうのです。

この心理的現象を不気味の谷といいます。(下図参照)

 

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竺原はその計画に必要な人材たちに、カウンセリングがてら勧誘を試みます。

そして4人のメンバーが集まりました。

 

・手先が器用で絵が上手い・乗雲寺芹香(じょううんじ せりか=パセリ

・プログラマー・棘塚聖司(いらつかせいじ=セージ

・脳障害をもつDTM製作者・苫戸井洋佑(とまといようすけ=タイム

・SNSに名前を記しておくと向こうから見つけて連絡してくれる都市伝説のハッカー・ロックスミス(=ローズマリー

 

 ※( )内はチャットで会議するときのハンドルネーム。

 

ビジュアルデザインはパセリ、立体化はセージ、動かすのはローズマリー、しゃべらせるのはタイムという役割分担が決まり、CGを人間と見分けがつかないレベルにまで精度を上げていきます。

 

果たして、竺原はそのCGをどういう目的で作ろうとしているのでしょうか。

 

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<まとめ>

ひきこもりの人間は、落ちこぼれなのではなく、学校や会社の旧弊的なシステムになじめなかっただけだと僕は考えています。

ひきこもりの人は学校や会社に行かないで済む分、自分の才能を磨くことに時間も労力もかけられるために、才能を伸ばしやすい環境ともいえます。

この小説に登場する4人のひきこもりたちは、各々の才能を持ち寄って最高の作品を創造しました。

 

世間からはダメ人間だと言われている者たちが、力を合わせて世間にブームをつくるほどの影響力をもった作品をつくりだすのは、実に痛快です。

 

竺原はCGで不気味の谷を越えるという計画の他にも、4人に色々やらせます。

「日本の田舎には未知のゾウが人知れず生息している」というウワサを流して、一大ブームを起こして町おこしをするという計画。

 ゲームをクリアした後に流れるエンドロールを最後まで観たものは、頭痛や幻覚に見舞われる病気をつくる計画。

竺原の行動は行き当たりばったりのように見えて、物語の最後になるまでその真の目的は分かりません。

 

何が起こるか分からないドキドキ感。

何を起こそうとしているのか不明瞭なまま進行するモヤモヤ感。

これらは他の小説ではなかなか味わえない新鮮な感覚です。

物語の力強さは、本来こういうものなのかもしれません。 

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