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【小説・文学】『俺の職歴』—ロシア版・筒井康隆

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『俺の職歴』ミハイル・ゾーシチェンコ / 訳:クーチカ / 群像社

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<久々にジュンク堂に行ったときに、この本を見つけました。>

何かのフェアに含まれていました。

大型書店の魅力は、街の中小書店には並んでいない珍しい本に出会えることです。

Amazonにも在庫はありますが、検索ワードから探し出せるものでもありません。

Amazonは検索結果や購入履歴からの関連書籍の紹介精度は上がっていますが、

思わぬ出会いを期待するなら、大型書店の方に軍配が上がります。

Amazonで自分が普段閲覧しないジャンルを、わざわざ定期的に見ようとしている人はあまりいないと思いますが、

書店では棚を見渡すだけで、普段なら自分の検索ワードに引っかかってこないような本も自然と目に入ってきます。

そういった「偶然の出会い」という面白さがリアル書店の強みです。

その強みがある限り、この世から書店が消えることはないと僕は信じています。 

 

<翻訳の方も珍しいです。>

この本はロシアの小説なのですが、翻訳は個人ではなく、グループでなされています。

グループ名は「ロシア文学翻訳グループ・クーチカ」。

大阪府枚方市を拠点に、ロシア文学の翻訳技術向上を目指して研鑽を積んでいるグループで、これまでに自費出版で4冊のロシア短編集を世に出したそうです。

すごいですね。

在野の研究者集団みたいな感じなのでしょうか。

翻訳ソフトの精度がどんどん上がってきている現在でも、そんな面白いことをされているグループが日本にあるんですね。楽しそう。

こういった試みは応援したくなります。

 

<この小説は1920~1930年代に書かれたものです。>

つまり約100年前ですね。

 第一次世界大戦と第二次世界大戦の間の時期に書かれました。

 ロシア革命のすぐ後の時期でもあります。

 

なんとなくですが、ロシアの民衆は比較的貧乏というイメージがあります。

政策によるものかは詳しく知りませんが、いつも一般市民たちの生活はお金に困ったエピソードであふれているというイメージです。

ドストエフスキーを読んだせいでしょうか。

 

 この小説でも、労働者階級の一般市民たちはお金のトラブルが多いです。

ケーキを3つまでなら買えるが、それ以上のお金は持ってないから4つ目は払わないとか、ホテルの風呂の排水設備が不調で床が水浸しになってしまったけれど、客が水道を止めなかったから弁償するのか(とても払えない)、ホテル側の設備に問題があったからホテル側が賠償するのかで揉めたりしています。

お金の持ち合わせがないというのは、どこへ行ってもトラブルのもとですね。

 

 <ロシア人は笑わない国民性っていうのは本当?>

 ロシア人は不愛想で笑わない国民性だというイメージが世界的な認識としてあります。

「ロシア人が笑わない理由」で検索してみてください。

実際、テレビでも見ましたが、接客においても笑顔を見せません。

彼らは笑顔を見せることが、恥ずかしいこと、卑しいこと、礼儀正しくないことだと考えているからです。(こちらが愛想笑いしようものなら怒られます。)

 

 だから感情表現があまり豊かではないのかな?と思っていました。

しかし、この小説に登場する人物たちは、怒ったり悲しんだり落ち込んだり、けっこう忙しいです。本当に親しい間柄ならば、笑顔を見せるそうです。

まあ、そりゃそうですよね。

彼らはただ、正直であることを信念に生きているだけなのです。

 

<この小説は短編集です。>

星新一ほどショートショートではありませんが、1話が3~5ページくらいで終わります。

登場する人物は誰もが、いい加減で頑固で、強がっていてマヌケで、主張は強いけど計算高くない、憎めないキャラクターたちです。

語り口も軽妙で、筒井康隆の『俺に関する噂』(新潮社)を読んだときと同じ感覚を味わいました。作品も同じ短編集ですし、作品内の空気が似ています。

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変わった短編集が読みたい方にオススメの作品です。

 

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