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【小説・SF】『アンダーグラウンド・マーケット』―仮想通貨に関する先見性に脱帽!

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

 『アンダーグラウンド・マーケット』藤井太洋 / 朝日新聞出版

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 この小説はもともと短編(中編?)として発表されました。

同じ舞台と同じキャラクターたちの二つの物語が合わさった形で文庫本として構成されています。第1話、2話ととらえてもよいです。

第1話(前編)が2013年に発表され、第2話(後編)が2014年3月に発表されました。

 

第2話の発表と同じ3月に、あの「マウントゴックス事件」が日本で起こりました。

当時、マウントゴックスは世界最大のビットコイン(以下BTC)取引所でした。

なんと450億円もの流出事件が起こり、業界を震撼させたのです。

その影響は今現在でも残っていて、裁判の行方の情報が報道されるたびに、未だにBTCの価格に変動をもたらすほどです

去年(2018年1月)に起きたコインチェック事件も記憶に新しいですね。

ハッキングによる被害総額は580億円相当といわれています。

 

2017年後半が仮想通貨が大いに盛り上がった時期で、

去年1年間は全体を通して大暴落していった時期となりました。

今年に入っても、まだ最安値を狙おうかという値動きをしています。

 

仮想通貨はまだまだ黎明期にあたり、法律やシステムその他あらゆることがまだまだ未整備な分野です。

そのせいでちょっとしたニュースで価格が大変動するので、落ち着かなくて困っている投資家の方がそれなりの数おられます。株や債券、為替のように価格がそれなりの値動きをしつつも安定していることが、投資をする上で重要です。

安定性がなければ、ただのバクチになってしまうからです。

実際に何かを購入するにも躊躇してしまいます。

自分の持っているお金の価値が数時間前の半分になっているかもしれないなんて考えられないでしょう。そんなお金は誰も使いたがらないはずです。

 

そんな不安を持っている方たちにも仮想通貨業界に参入してもらうために、

価格が安定した仮想通貨が去年は少しずつ作られてきました。

ペッグ通貨と呼ばれるコイン(仮想通貨)たちです。

ステーブルコインとも呼ばれます。

 

代表的なのがテザー(Tether)です。(以下、USDTと表記します。)

USDTはドルと連動していて、

USDTの価格は法定通貨のドル(USD)とほぼ同じになるように価格が動きます。

(つまり他の仮想通貨と比較すれば値動きの幅が圧倒的に小さい。)

USDを仮想通貨化したものがUSDTということです。

日本の「円」と連動しているペッグ通貨は、各銀行などで構想は上がってきていますが、USDTのように実際の取引所で扱われて機能しているものはまだありません。

 

この小説では「円」のペッグ通貨「N円」を題材とした世界が舞台です。

時代設定は2018年。

我々の現実ではもう過ぎていますね。

著者が小説を書いた5年後にあたる時期ですが、その頃には「ドル」だけでなく「円」でもペッグ通貨が存在して流通して社会で機能しているというビジョンが、著者の頭の中にはあったのでしょう。

すごい先見性です。

現実の方がまだ遅れているのです。

2013年や2014年にはまだ「ペッグ通貨」という言葉すらなかったのに。

もうその概念を理解して、予見していたのです。

 

小説の中でも、まだ表の日本経済で健全に使われているわけではなく、

移民を中心とした、日本の法律であまり守られていない人達が形成するコミュニティで、裏経済を円滑に回すために非常に役立っている状況です。

格差が拡大し、正社員という身分は珍しくなった時代では、貧困層はまともに税金を払っていたら明日を待たずして破綻してしまいます。

だから仮想通貨「N円」で支払いすることによって、税金を払わないで済む方法を選択しています。裏経済の中で生きる人々は、現金はほとんど持っておらず、店側も現金払いは嫌がります。(お釣りがないし、売上げが表の帳簿に計上されてしまうから。)

 

 主人公・小谷巧は裏経済で生きていくために、仲間たちとともに自分たちの新ビジネスを立ち上げます。まだ「N円」決済できない店を探して、決済できるように会計システムを提供し、裏帳簿ともつなげられるようにカスタマイズする仕事です。

学校を卒業したばかりで生活の基盤がないので、小さな依頼からコツコツと信頼を獲得して、信用グレード(社会的なランク?)を上げていこうと考えています。

契約も成立しシステムも完成したあと、クライアントの口座に入金されるはずの顧客からの支払金が、いつまで経っても入金されないというトラブルが発生します。

デザインセンスは壊滅的だが、スゴ腕のプログラマーの恵とともに、原因究明に乗り出します。

 

SFという体裁はとっていますが、仮想通貨が近い将来に普及することはほぼ確実だと思われます。一般流通したそのときに、現在のBTCがそのまま業界シェアNo.1のままかどうかは不明ですが。

 

来るべき仮想通貨主流時代(法定通貨はサブ的な使われ方として残る?)。

そのときに備えて、どういう世界が近く訪れようとしているのか、事前に知っておく意味も含めて、今読んでおくべき小説かもしれません。

 

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