【エッセイ・評論】『影のなかのロシア』―小説ではないウェルズの言葉
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『影のなかのロシア』H・G・ウェルズ / 訳:生松敬三・浜野輝 / みすず書房
「SFの父」とも呼ばれるSF界の巨星=H・G・ウェルズによる著作です。
有名作品は『タイム・マシン』や『宇宙戦争』。
タイムマシンという設定を小説の中で初めて導入した方です。
でもこの本は小説でもSFでもありません。
だからこそ珍しいので買ってみました。
評論文ですが、めちゃくちゃ分かりやすいです。
具体例と抽象論のバランスがいいからでしょうか。文章自体もカッコイイ。
内容としましては、
ロシア第一革命(1905年)、第一次世界大戦への参戦(1914年)などでロシア帝国が崩壊へ向けて進んでいた1914年に著者は一度ロシアを訪れ、1920年に再訪しました。
そのときの民衆の様子、社会のありよう、政治政策、主義思想についての記録です。
確かに歴史的には、ボルシェビキ(ソ連共産党の前身)はかなりの欠陥だらけで残虐なこともやったのだろうが、この状況下でボルシェビキ以上に明確な目的意識とビジョンを持って社会を修復しようとしていた者たちは当時いなかった。
彼らは最善を尽くしていた、と著者は好意的に書いています。
大体、この手の評論は批判に終始するところですが、さすがはウェルズ。
だから面白く読めたのかもしれません。
(1978年出版)