【小説】『七つの殺人に関する簡潔な記録』―ジャマイカの英雄ボブ・マーリー銃撃事件
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『七つの殺人に関する簡潔な記録』マーロン・ジェイムズ / 訳:旦敬介 / 早川書房
⇧2019年6月20日発売。
ハードカバーです。文庫版はありません。
ジャマイカ人による、史実を元にしたジャマイカ小説です。
この作品で世界的に権威のあるイギリスの文学賞・ブッカー賞を受賞しました。
<物語の背景>
まずは物語に関係する前提情報を紹介します。
ジャマイカが、どこにあるかご存知でしょうか。
アメリカの南、メキシコの東、つまりカリブ海にある島国です。
キューバがすぐ近くにあります。
キューバは社会主義国家です。
ゲバラとカストロが革命を起こして、1959年からそうなっています。
キューバに近いジャマイカにも、その影響は少なからずありました。
この小説で描かれるのは1976年12月から15年間のジャマイカです。
当時は冷戦の真っ只中で、アメリカが世界中の共産主義や社会主義勢力の動きに非常に敏感になっていました。
つまり反アメリカ的な組織があればCIAが暗躍して、徹底的に潰そうと躍起になっていた時代です。
(まあ今もCIAはしっかり裏で活動しているわけですが・・)
イギリスから独立後、ジャマイカの政治家たちは、民主社会主義的な人民国家党(PNP)と保守的なジャマイカ労働党(JLP)に分かれて勢力争いをするようになりました。
それぞれの政党が貧困層からの支持を得るために、ゲットー(居住区)のインフラ整備に力を注ぎました。
そして、それぞれのゲットーは自分たちに良くしてくれた政党を支持するようになります。
この流れが強まり、各政党が自党を支持する地区の整備を優先し、仕事を斡旋してあげる一方で、敵対する地区を放置するようになります。
やがて政党の争いは、ゲットー間の争いにもなっていきました。
そして地区を取りまとめるギャング(ポシー)のボスと政党が癒着するようになり、ジャマイカは様々な勢力が覇権を争う血生臭い場所になりました。
この小説は、そんな治安の悪い混沌とした時代を描いています。
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<あらすじ>
この小説には、ジャマイカの国民的英雄でありレゲエ・スターのボブ・マーリーが登場します。
彼はこの小説内で名前の明言が避けられており、「歌手」と表記されています。
「歌手」は1976年12月5日に開催される無料コンサートに参加する予定でした。
ジャマイカの治安は悪かったので、彼の安全を心配する周囲の人たちは、彼に出演を断るべきだと助言していました。
しかし彼は、政治暴力の停止を訴えるために一曲だけ演奏することにしたのです。
「歌手」の目的とは裏腹に、彼の世界的な知名度を利用しようと考える政治家たちは大勢いました。
その証拠に、コンサートのすぐ後に選挙日を設定してきました。
このままでは「歌手」の出身地区と対立している勢力は、不利になってしまいます。
だから「歌手」をコンサートに出場させない計画が立てられました。
1976年12月3日。
「歌手」は自宅を襲撃され、マネージャーや関係者と共に銃弾を受けました。
しかし彼は一命を取りとめます。
その後、街では大騒ぎになりました。
国民的英雄を殺害しようとしたのは一体誰なのかと。
「歌手」は政治家はもちろん、各ギャングのボスたちとも友人でした。
つまり彼らが殺害を指示したわけではなく、部下の誰かが許可なく動いたわけです。
この銃撃事件の真相が、様々な人物の視点を通して描かれていきます。
コペンハーゲン・シティ(ギャング)のボス:パパ=ロー
その組織のNo.2:ジョーズィ・ウェールズ
その組織の下っ端:バン=バンとディーマス
ジャーナリスト:アレックス・ピアス
CIAジャマイカ支局チーフ:バリー・ディフロリオ
失業中の元受付嬢:ニーナ・バージェス
他にも多くの登場人物がいますが、主に上記の彼らの視点で物語は描かれます。
果たして犯人は誰なのでしょうか。
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<まとめ>
冷戦時代のジャマイカが舞台の、ボブ・マーリーが銃撃されるという現実に起こった事件をもとにした物語です。
ミステリー要素もありますが、ジャマイカの語られざる歴史小説と言った方がいいかもしれません。
社会情勢があまりに混沌としているため、アメリカの記者やCIAのエージェントたちも情報が錯綜していて状況を把握しきれていません。
ギャングたちも全体像が分かっていません。
とにかくグチャグチャで無軌道で、それがこの小説の面白さです。
暴力と麻薬が常態化しているカオスな世界をお試しあれ。
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