【ノンフィクション】『魔王』―薬局事業から麻薬武器商人へと転身した男
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『魔王 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』エヴァン・ラトリフ / 訳:竹田円 / 早川書房
⇧2019年10月17日発売。
ハードカバーです。(文庫版はありません)
『アベンジャーズ』シリーズのルッソ兄弟によるドラマ化も決定しています。
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【ノンフィクション】『魔王』/ オンライン薬局事業から麻薬武器商人に転身した男【本のおすすめ紹介】
<犯罪帝国を築いた男>
漫画や映画のような男が現れました。
フィクションでもありえないような彼の人生を知れば、ミステリー作家たちは青ざめ、起業家たちは舌を巻くことでしょう。
男の名前はポール・コールダー・ル・ルー。
彼は2000年代初頭、フィリピンにコールセンターを設置して、アメリカ人を対象としたオンライン薬局事業を展開し、違法スレスレの規制薬物を全米に売りまくって莫大な利益を上げました。
それを軍資金にして、アフリカとアジアで木材事業と金採掘事業を始めます。
そして香港やマニラで隠れ家となる不動産を買い、無法国家ソマリアでマグロ漁業を立ち上げます。
さらに南米の麻薬カルテルと提携してコカインを入手し、北朝鮮製の純度の高い覚醒剤を売りさばき、ロシアから武器を買いあさって傭兵集団を組織しました。
イランにはミサイル誘導システムを売りつけ、東アフリカのセーシェルでクーデターを起こそうともしました。
裏切りや不正を働いた疑いのある部下たちには、暗殺部隊を差し向けてあっさり処分してしまいます。
これらの膨大な事業を彼が一人で立ち上げ、全て管理・統括していたのです。
化物ですね。
この本では、そんな一大犯罪帝国を築いたポールの人生や事業ができる経緯、そしてアメリカ麻薬取締局(DEA)の捜査とポール逮捕後の裁判の過程が、アメリカのジャーナリストのエヴァン・ラトリフの手によって描かれています。
非常に長期間に及んだ、綿密な取材に基づく労作です。
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<ポール・ル・ルーという男>
ポールは1972年にジンバブエ(当時はローデシア)で生まれました。
母親があまりに若かったために、彼は生まれる前から養子に出されることが決定していました。
養父母はポールが養子だということを隠しますが、愛情をもって育てました。
大人になって暴虐の限りを尽くしたポールも、小さい頃はおとなしかったようです。
しかし頭の良さはすでにズバ抜けており、周囲もそれを認めていました。
やがて養父母はポールに高い教育を受けさせるため、南アフリカに移住します。
ポールは10代の頃にプログラミングにハマりました。
高校を中退した後は、大学のプログラミングコースを受講して、1年分の教材を8週間で習得しました。
18歳になった彼はアメリカ旅行で最新のテクノロジーに触れます。
そして南アフリカに帰国するなり、「俺はこの国を出る」と家族に告げ、スーツケース一つを抱えてイギリスに飛びました。
イギリスに渡ったポールはソフトウェア開発会社に就職するも、長続きしませんでした。
その後も住む場所を転々と変えながらプログラミングの仕事を受け、腕と知識量を上げていきます。
そして2年を費やし、ユーザーがハードドライブを丸ごと暗号化できるソフトウェア(E4M)を開発して、無償で公表しました
2003年、ジンバブエの新しいパスポートが必要になったポールは、出生証明書を探しに行きました。
その中で自分が養子であることを知り、ショックを受けました。
その時から彼の中で何かが変わってしまったと親戚は言います。
ポールはそれから、駆り立てられるように仕事に没頭していきます。
ポールはプログラマーの腕を活かして金持ちになるにはどうしたらいいか、構想を練り始めました。
それから彼はフィリピンに移住し、アメリカ人を対象としたオンライン薬局事業を立ち上げます。
それはウェブサイト、アフィリエイター、医師、薬剤師、顧客サービスセンターが複雑で巧妙に絡み合ったネットワークです。
詳細は省きますが、まあ見事です。
ここに組み込まれた者たちは、誰一人全体像を把握しておらず、自分が法的にグレーゾーンの仕事をしていることも自覚していませんでした。
全てを知り、統括管理しているのはポールのみです。
この事業によって、彼は急速に莫大な富を築いていきます。
一方アメリカ麻薬取締局は、ネット販売処方薬の急増に懸念を示していました。
ウェブ薬局を通じて、危険薬物が世間に垂れ流される可能性があるからです。
ポールの会社(RX社)は、違法とまではいかないけれども、州によっては規制薬物に指定されている鎮痛剤を販売していました。
その販売量が異常に多かったことから、麻薬取締局がRX社の不審な動向を注視するようになりました。
それ以降、徐々に非合法ビジネスに手を広げていくポールと、彼を逮捕するための証拠集めに苦労する捜査官たちの知恵比べが始まります
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<再起を諦めない男>
ポールは賄賂を使って世界中に味方と隠れ家を作り、中々シッポをつかませませんでした。
逮捕された後も、麻薬や武器の密売ルート情報などをチラつかせて司法取引に持ち込み、裁判官や検察を手玉に取ります。
彼は捜査官たちに仲間を売って、次々と逮捕させていきます。
仲間たちの刑が確定していく中で、ポールだけが特別扱いされて中々裁判が進みません。
結局、ポールは刑が確定しても、10年ほどすれば出所できるようです。
没収された彼の資産も全体の数%に過ぎず、ほとんどはどこかに隠してあります。
彼は収監中でも外部と連絡をとって、出所後の計画を練っています。
再起を諦めていないのです。
怖いですね。
スティーブ・ジョブズを超えるほどの仕事ぶりと狂暴性とカリスマ性と頭脳を持ち、一大犯罪ネットワークを築き上げた男の記録です。
長編映画を3本くらい続けて観るくらいの濃密なドラマでした。
とくとご覧あれ。
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