【小説・ミステリー】『ハバナ零年』―電話を発明したのはベルではない!
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『ハバナ零年』カルラ・スアレス / 訳:久野量一 / 共和国
⇧2019年2月28日発売。
文庫版はまだありません。
<メウッチとは>
アントニオ・メウッチという人物をご存じでしょうか。
20代でキューバに移住した、イタリア人の発明家です。
彼は様々なものを発明しましたが、一番有名なものが電話です。
電話の発明といえば、長らくアレクサンダー・グラハム・ベルの功績だとされていましたが、実はメウッチの方が発明したのはかなり早かったのです。
しかし経済的に困窮していたメウッチは、高額のお金がかかる特許申請をすることはできませんでした。
少額でできる仮の特許申請をしておくも、資金が尽きてしまいます。
そうこうしている内にベルが特許申請を出し、それが認められてしまいました。
メウッチはベルと裁判で争いましたが、ベルの雇った弁護士がやり手で、メウッチは負けてしまいます。
そして「電話はベルが発明した」という説が世間に浸透してしまったのです。
しかし2002年に新しい証拠が発見され、「電話を発明したのはメウッチである」ということが公式に認められました。
この小説は、そんなメウッチの名誉回復を巡って様々な策謀が絡み合うミステリーです。メウッチの方が早かったと知っている人は知っていたということですね。
キューバ人作家によるキューバの話です。
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<あらすじ>
物語の舞台は1993年のキューバの首都・ハバナ。
まだベルが電話を発明したと思われていた時代です。
経済危機の真っただ中だったキューバでは、国民の誰もが食べ物などの物資が不足していて貧しい生活を送っていました。
主人公はハバナ工科大学で数学教師をしているジュリアです。
ある日彼女は、彼女の元教師であり恋人でもあったユークリッド(仮名)から、ある科学文書の話を聞かされました。
その内容は、電話を発明したのはベルよりもメウッチの方が早かったと証明できるというものです。
ユークリッドは娘のマルガリータの部屋で一度その現物を見たことがあり、それを渡すようお願いしたものの断られてしまい、今はマルガリータの元夫であるエンジェル(仮名)が所持していると言いました。
かつてユークリッドは結婚していましたが、度重なる女子学生との浮気のせいで離婚してしまい、そのことで娘のマルガリータにも嫌われていたため、文書を譲ってもらえなかったのです。その後、ユークリッドの社会的立場は失墜しました。
ジュリアはジュリアで、学生の愚かさや軽薄さにうんざりして教師を辞めたばかりで、お金を稼ぐアテはありませんでした。
二人はメウッチの科学文書を手に入れてメウッチの発明を世に知らしめることで、お互いに社会的名声を手に入れようと考えました。
ジュリアはエンジェルに近づき、親しくなります。
いつしか二人は恋人同士になり、メウッチの科学文書の話題も出て来ました。
しかしエンジェルは文書の存在を知ってはいても、所持しているのは悪友である作家のレオナルドであると言いました。
ジュリアはレオナルドに近づき、親しくなります。
レオナルドはメウッチに関する小説を書いており、かなりメウッチに詳しいことが判明しますが、肝心のメウッチの科学文書はユークリッドが所持していると言いました。
ジュリアは困惑します。
誰が文書を所持しているのか分からなくなったからです。
その後、ユークリッドもエンジェルもレオナルドもジュリアに部分的に嘘をついていることが分かってきます。
果たして文書を本当に所持しているのは誰なのでしょうか。
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<まとめ>
メウッチの科学文書の在処を巡って、嘘とかけ引きが交錯します。
AはBが持っていると思っていて、
BはCが持っていると思っていて、
CはAが持っていると思っている三すくみ状態です。
誰もがジュリアに嘘をつき、うまく彼女を操って自分のもとに文書がやって来るように戦略を練っています。
読者は本当にそんな文書が実在するのか怪しく思えてくるでしょう。
「実はそんなものありませんでした~!」というのは夢オチと同じで絶対にやってはいけない安易な展開ですが、もしかするとそういうオチかも・・・と心配になるはずです。
安心してください。
実在しますし、ちゃんとしたオチもついています。
文学的要素も恋愛小説的要素もありますが、数学パズル的ミステリーとしても読めます。
キューバ人の小説はなかなか日本で翻訳されないので、珍しいもの好きな方はぜひ。
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