【マンガ】『87CLOCKERS』全9巻―世界に貢献できるゲーム
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『87CLOCKERS』二ノ宮知子 / 集英社
⇧1巻は2012年発売。
2016年9月に9巻が発売されて完結しています。
『のだめカンタービレ』の次に連載された作品です。
<オーバークロックの世界>
オーバークロックという言葉をご存知でしょうか?
PC(パソコン)のCPU(中央演算処理装置)やメモリとかを、定格のクロックを超える高いクロック周波数で動かすことです。
簡単に言えば、PCを普通より速く動かすことです。
今でこそ家庭にあるPCでも、動画の動きがカクカクすることなくスムーズに観られるようになりましたが、ちょっと前までは重い動画を再生しようとするとPCが固まったり、動画の動きがぎこちなくなったりしていました。
PCの演算能力が追い付いていないからです。
そんな状況に耐えかねたPCに詳しい人たちは、昔から試行錯誤を重ねてきました。
その方法の一つがオーバークロックです。
ソフトやゲームを快適に動かすために、PCの性能を上げる手段としてオーバークロックをする人もいるし、オーバークロックの数値を競うこと自体を目的としている「オーバークロッカー」もいます。
パーツをバラで買ってきて自分で作る自作PCが一般的になって、オーバークロックに対応したパーツも販売されるようになって、今やオーバークロックは世界中で大会やイベントが開かれるようになりました。
一般家庭レベルではもはやPCの演算速度がこれ以上上がる必要を感じていないかもしれませんが、現在よりも速度が上がることを望んでいる分野は多くあります。
例えば計算速度が上がると、津波の予測スピードや新薬の開発スピードが劇的に短くなります。
コンピュータが速くなるというのは、世界が変わるくらいすごいことなのです。
このマンガは、オーバークロックの世界で競い合う人達の物語です。
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<あらすじ>
名門の音大の4回生である主人公・一ノ瀬奏(かなで)。
周りの同級生たちは海外留学が決まったり就職活動に勤しんでいたりしますが、彼は特にやりたいこともなく、コンクールで他人と競い合うことも苦手だったので、進学も就職もきちんと考えないまま過ごしてきました。
合コンでは「後ろ向きな人生だね」と言われ、夢を持てない自分にイラつき、
自分で自分がどれだけつまらない奴か知っていると自虐的になっていました。
ある雪の降る夜に、アパートの外で裸足で立っていた女性・ハナと出会います。
彼女はアルバイトをしながら、世界一のオーバークロッカー・ミケの助手としてオーバークロックに参加していました。
ハナの気を引きたい奏は、オーバークロックの世界に入っていくことになりました。
ハナにオーバークロックを始めるためのパーツや初期設定を教えてもらい、恋敵のミケを超えるためにオーバークロックの試行錯誤を重ねていきます。
PCを動かしてCPUを働かせると、CPUが熱くなります。
CPUが熱くなると性能が低下して計算速度が落ちます。
CPUを熱くしないために、常に冷却し続けないといけません。
オーバークロックには、CPUを冷却するための方式が大きく分けて3つあります。
空冷(扇風機)と水冷と液体窒素冷却です。
ミケとハナからは液体窒素式を教わった奏でしたが、上級者向けのやり方で道具も特殊なため、中々簡単にはそろえられません。
機材のパーツを探している時に出会ったジュリアに、オーバークロックの基本である空冷式を教えてもらい、大会に参加することになりました。
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<世界中で競えるゲーム>
著者の作風には珍しい題材を探してきて、その「特殊さ」でマンガとしての独自性を獲得しようという狙いがあります。
農業(『GREEN』)だったりオーケストラ(『のだめ』)、オーバークロック、質屋(『七つ屋 志のぶの宝石匣』)・・・etc。
その中でも突出して特殊なのがやはり「オーバークロック」でしょう。
よくこんな変わった題材を選ぼうと思ったものです。
それでもちゃんとエンターテイメントに仕上がっている点は見事です。
マイナーな職業に就いている主人公のお仕事紹介マンガというのは多くありますが、オーバークロックは仕事ですらありません。
完全なる趣味の世界です。
世界中の人達が、メインの仕事をしながらその合間に記録を出してタイムを競い合っているのです。要はオンラインのレースゲームと同じです。
楽しそうですね。
※ちなみに今だったら、ビットコインのマイニングは「CPU」でもなく「GPU」でもなく、「ASIC」というマイニング特化型の集積回路を使用しないと勝負にならない状況です。
これも計算速度を競っているわけですが、オーバークロックと似ています。
マイニング企業は電気代節約とコンピュータを冷却するために、寒冷地の国に拠点を置くようになりました。マイニングでの計算速度は、仮想通貨業界でも重要な問題であり続けています。
「ASIC」でのマイニングが騒がれ出したのは2018年頃からですが、このマンガの連載は2011年から始まりました。
著者のテーマの先見性に驚かされます。
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