【マンガ】『ジュニオール』1巻―勝ちたいのか、楽しみたいのか
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『ジュニオール』灰谷音屋 / 秋田書店
⇧2018年10月発売。
2019年5月時点で4巻まで出ています。(ハイペース刊行!)
週刊少年チャンピオンで連載されています。
<現代サッカーの弊害>
昔のやや感覚的で大味なサッカーと比べて、現代のサッカーは様々な戦術が考案されてシステマチックになっています。
それを実現させるために、選手たちには身体能力の他に協調性と知性が要求されます。
監督が指示した戦術をチーム全員で実践するわけです。
その戦術がキマれば圧倒的な強さを発揮しますが、一方で監督やチームのルールに選手たちががんじがらめになっているとも言えます。
たとえ小学生であってもガチのチームでは、監督の意向に逆らうようなプレーをする選手はスタメンに選ばれませんし、勝手なプレーをした選手は監督に怒られます。
選手自身が良かれと思ってやった結果だとしてもです。
監督は自分の戦術に従わない選手を嫌います。
監督に嫌われたら試合で使ってもらえません。
試合に出られないということは実績を積めないということです。
そうなるとプロになることはできません。
結果、プロを目指す子どもたちは、監督や大人の顔色をうかがいながらサッカーをすることになるのです。忖度ともいえるでしょう。
こういう状況は、子どもたちから自由にプレーする楽しさを奪っているという見方もできます。
本当は子どもたちは、大人にああだこうだ言われずに自由にやりたいはずです。
それが一番楽しいからです。
しかしチームを制御するために、大人は子どもたちを抑えつけるのです。
もちろんどこまで選手の裁量に任せるかは、監督によって違います。
しかしどんな監督に恵まれるかは運でしかありません。
どんなに上手い選手でも、自分のプレイスタイルと監督の意向とが合わなければ不遇の時代を過ごすことになります。
このマンガの主人公たちはそういう監督に当たってしまったことで、現代サッカーのやり方に疑問を持つようになりました。
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<あらすじ>
名古屋でサッカーのジュニアユースに在籍していたけれど、クビになってしまった高校1年の志摩晃(アキラ)。
彼は岐阜県可児市にある県立高校に転校し、弱小サッカー部に入部します。
サッカーエリートである彼がなぜそんなクラブでサッカーをするのか周りは疑問に思っていますが、チームが強くなったので深くは追求されません。
彼の夢は元々、プロサッカークラブの監督になることでした。
選手として活躍することはもう諦めて、将来の指導のために役に立つかもしれないという理由で部活をしているのです。
しかし部員も少なく選手たちの技術も素人同然のレベルで、監督もやる気がないことに絶望していました。
ある日、志摩は日系ブラジル人を母に持つ同級生・五十嵐ジュニオールと出会います。
五十嵐は美術部に在籍していましたが、ブラジルでもサッカー経験があり、その技術は天才的でした。
志摩は五十嵐をサッカー部に誘いますが、頑なに断られます。
志摩がユースチームの監督に使い捨てられたという苦い経験があるように、
五十嵐にも監督の意向と自分のプレイスタイルが合わずに、クラブチームを追い出されたという苦い経験がありました。
だから大人から強要されるサッカーはもうやりたくないと言うのです。
ところで彼らの高校は、野球部だけは強豪でした。
野球部とサッカー部はグラウンドを分割して使っており、弱小サッカー部が野球部と同じ面積を使えるという現状に、野球部員たちは不満を持っていました。
弱小サッカー部を追い出すために、野球部はサッカーで対決して負けた方がグラウンドのスペースを譲るという賭けを提案してきます。
野球部の挑発に乗って勝負を受けた志摩でしたが、彼の切り札は五十嵐に助っ人を頼むことでした。
試合は始まりましたが、五十嵐はやって来ません。
彼は再びサッカーをすることになるのでしょうか?
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<まとめ>
五十嵐は楽しくサッカーをすることに強いこだわりがあります。
楽しくないサッカーなどしたくはないし、する意味がないと思っています。
「勝ちたい」のか、「楽しみたい」のか。
昔からある究極の二択ですが、五十嵐は後者を選びます。
勝負である以上、勝ちたいとは思います。
しかしそれ以上に楽しんでプレーしたいと五十嵐は考えています。
自分の好きなようにプレーして、結果勝っていればなお良しということです。
「勝つことだけが正義だ」という風潮に待ったをかけているマンガです。
勝負にこだわるのはプロに任せておいて、学生時代には楽しむために部活をやるという姿勢があってもいいのではないでしょうか。
大人になったらプロでなくても趣味としてスポーツを楽しむ人が多いのに、なぜ学生は必ず勝負にこだわらないといけないのでしょうか。
部活の方針もあるので全員が納得するようなやり方は難しいかとは思いますが、楽しさを模索する人間がいてもいいのではないでしょうか。
そんな彼らが目指すのはインターハイ優勝などではなく、
大人に管理されない自由なサッカーなのです。
この先、彼らがどういう道を選んでいくのか楽しみなマンガです。
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