【マンガ】『金の国 水の国』―これほど気持ちのいい少女マンガは他にない
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『金の国 水の国』岩本ナオ / 小学館
⇧2016年7月発売。
この年の『このマンガがすごい!』の少女マンガ部門で1位でした。
1冊で完結です。
<著者とその作品群について>
『町でうわさの天狗の子』(全12巻)や『雨無村役場産業課兼観光係』(文庫版全2巻)が代表作です。どちらも最高に面白いです。
著者の絵柄はかなり独特です。
少女マンガ誌に掲載されていますが、少女マンガっぽくありません。
かといって少年マンガや青年マンガとも違います。
線はクッキリと描かれているのに重くはなく、軽すぎるわけでもありません。
スクリーントーンを極力減らしてあるのに画面が白くて寂しくならないのは、絵が細部まで描き込まれているからです。「神は細部に宿る」とはまさにこういう作品のことをいうのだなと思います。
素朴さと幻想性を兼ね備えている稀有な絵柄です。
キャラクターだけでなく背景や小物の模様にも一切手を抜いていません。
背景の描写は細かくてキレイで、画面の隅々にまで気を配って描いていることが分かります。
(少女マンガの背景は、何も描かれないままで白かったり、とりあえずスクリーントーンを貼って誤魔化してあることがよくあります。)
登場人物も個性的です。
普通の少女マンガならばイケメンや美少女を主人公にしますが、その慣習に背を向けるかのように、真逆の設定のキャラクターを主人公にする傾向にあります。
そこが素晴らしく独創的である点の一つです。
ギャグマンガでならありますが、ストレートでシリアスな恋愛モノなのに主人公がぽっちゃり系女子という作品は他にありません。
このマンガはぽっちゃり女子の主人公と、決してイケメンではない青年との恋愛ストーリーであり、架空の世界を舞台にした戦争回避に奔走する人々のファンタジーでもあります。
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<あらすじ>
昔々、隣り合う仲の悪い国がありました。
過去には戦争もあり今でもいがみ合ってはいましたが、友好の印にA国からは一人の娘を、B国からは一人の青年を婚約者として相手の国に送ることになりました。
お互いの国が相手の国を出し抜くため、人間ではなく犬や猫を送りつけました。
それぞれの国王は自分が動物を送り付けたのは知っていますが、同じように動物を送り付けられたことは知りません。
これがお互いの知るところとなれば、戦争に発展しかねません。
A国にはお姫様が100人はいて、その末端の一人である主人公・サーラ。
彼女の元へB国から婿として犬が送られてきました。
父親である国王や姉たちにそのことを知られたら、B国とのもめ事になることは明らかです。だから彼女は夫が来たフリをして犬を飼うことに決めました。
一方、B国の図書館長の息子・ナランバヤルは仕事にあぶれていました。
彼の元へA国から嫁として猫が送られてきました。
彼もまた猫を飼い始め、散歩途中にA国との国境の山でサーラと出会います。
彼はサーラの犬を救った縁からサーラの家に招かれ、そこで夫のフリをして王族たちを誤魔化す手伝いをすることになりました。戦争回避のために。
A国には何でもそろっていて豊かでしたが、水だけが枯渇しかかっていました。
B国にはお金も資源もなく失業者もあふれている状況でしたが、水だけは豊富にありました。
ナランバヤルはB国からA国にまで届く水路を建設し、本当の友好国になれるようA国の大臣に働きかけます。
A国の戦争支持派は彼が邪魔なので、彼を暗殺しようと試みます。
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<まとめ>
サーラとナランバヤルが敵国同士なのにお互いに敬意を払って親しくなっていくこと、そして相手の家族や国を大切に扱おうとする行動が、周りの人たちを巻き込み、戦争回避につながっていく展開の上手さ、構成の巧みさは見事です。
これほど気持ちのいいキャラクターたちに出会えることはほとんどありません。
文学の存在意義が読者を不安にさせることならば、
マンガの存在意義は読者を高揚させたり幸せな気持ちにさせることだと思います。
この作品は、まさにそれを体現しています。
「ドロドロした人間関係や、計算高さを競い合うような心理的かけ引きの描写が巧みな少女マンガは、現実ですでに十分思い知っているからもういいよ」という方には特にオススメです。
やっぱり読んでよかったと思える楽しい作品に出会いたいですよね。
買って絶対に後悔しない、そして何度でも読み返したくなるマンガです。
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