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【エッセイ】『自殺』―明るく自殺について考える本

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『自殺』末井昭 / 朝日出版社

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<自殺を語ること>

日本では自殺について語ることを避ける風潮にあります。

自殺を縁起が悪いもの、そういう話題は辛気臭いもの、自殺をする人は社会の負け組だと何となく思っているからです。

いじめで自殺した学生さんがニュースになっても、クローズアップされるのは学校側の対応だったりいじめの内容だったりします。

自殺の方法や意味・メッセージ、そういう手段を選択することになった経緯・思考は報道されません。

 

自殺という話題は、忌避すべきものとすら思われているのかもしれません。

 

日本の年間自殺者数は3万人です。

これは交通事故で毎年亡くなる数の6倍もの大きな数字なのですが、交通事故ほどには、その防止対策が講じられているとはいえません。

以前までは自治体もその対策に消極的でした。

今では自殺未遂やうつ病の自助グループのような、草の根活動によって世間の認識も少しは変わってきましたが、それでもまだまだ積極的に自殺を食い止めようという対策が考えられているかは疑問です。

交通事故の方が対策しやすいからでしょうか。(ルールを作ってそれを遵守させるように、大衆に注意喚起すればいいだけだから。)

自殺はその理由や方法も多岐にわたっているので、一律に対応策を作りづらいのは分かります。

 しかし、問題が難しいことと、問題を考えようとすることは、また別の話です。

 問題が難しいからといって、考えなくてもいいことにはなりません。

 

 <面白く自殺を語る>

自殺について語ろうとすることは、暗くなったり、周りに気を使ったりして簡単にはいきません。どんな話題でもそうですが、デリケートな問題ほど、話し手の技量が要求されます。

この本は「面白く読める、自殺について語る本」を目指して書かれています。

「面白い」というのはワハハと笑えるという意味も多少ありますが、

これまでは自分に関係が無いと思って、自殺という話題に興味がなかった人に、関心を持ってもらえるという意味です。

 

著者には、子供の頃に母親が隣の家の青年とダイナマイト爆発心中をしたという驚きの過去があります。一生のトラウマになってもおかしくない事件ですが、著者はそれを乗り越えて笑い話にまでできるようになりました。

他にも、著者は普通なら隠したいと思う自分の過去エピソードを明かしてくれます。

ギャンブル(パチンコ)依存症になっていたこと、うつ病、不倫、何億円という借金、引きこもり、etc・・・。

控えめに言っても、立派とは言い難い人生です。(それでも死のうとしなかったのは立派ですが。)

著者は自分の人生を語りながら、「こんなにバカらしくてもダメ人間でも生きているんだから、君たちも自殺しようなんて考えない方がいいよ」と暗にメッセージを送っています。

 

他にも、両親が自殺した方や、自殺について語るイベントの主催者にインタビューをされています。彼らの人生もまた苦難の連続で、切実で、実に参考になりました。

 

著者は言います。

「僕は必ずしも「自殺はダメ」とは思っていません。もちろん死ぬよりは、生きていた方がいいに決まっています。でもしょうがない場合もあると思います。人間社会は競争だから、人を蹴落とさなければならない。時には人をだますこともあるでしょう。

でも、そんなことしてまで生きたくないって思うまじめな人、優しい人に「ダメ」と、分かったようなことは言えないですよ。まじめで優しい人が生きづらい世の中なんですから」と。

つまり、どうしても死にたいと思うのは、まじめで優しい人たちなのです。

 

今、悩んでいる方は、

どうせロクでもない社会なんだから、まじめを突き詰めるのではなく、

もう少しだけいい加減に生きることを自分に許してあげてください。

 

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