【ノンフィクション】『マヤ文字解読』—シャンポリオンがいなくても
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『マヤ文字解読』マイケル・D・コウ / 訳:武井摩利・徳江佐和子 / 創元社
⇧古本価格で2300円でした。
まず表紙デザインが良いです。
マヤ文字が刻まれていて凹凸まで分かる仕様になっています。(カッコイイ)
手ざわりで楽しめるのも、紙の本の醍醐味ですね。
(デジタルに手ざわりの楽しさはない)
450ページ弱ですが、ブ厚いのは良い紙を使っているからです。
写真や図も多く挟まれていて分かりやすく配慮されています。
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<内容>
19世紀初頭にシャンポリオンによって、古代エジプト象形文字であるヒエログリフが解読されたのは有名ですが、南米のマヤ文字が解読されたのはなんと20世紀後半になってからでした。
けっこう最近のことなんですね。
この本では、マヤ文字の解読に至った経緯が詳細に語られています。
解読に携わった当事者の一人が執筆しているのでリアリティがあります。
世界の言語における表意文字、表音文字、表語文字と比較しながら、多くの誤解と回り道を経て、少しずつ解読のヒントが発見されていく道のりは本当に険しく、とても独りではゴールに辿り着けません。
学問の研究者たちは世界中にいますが、一つの大きな謎に個々が立ち向かっていて、その小さな発見がお互いにあるいは後進に役立って全体が前進していく様は、同じ人類として誇らしいですね。
言語を作り出し、学問を体系的にまとめていけるのは、人間の強さだと思います。
マヤ文字が、日本の漢字ーひらがなシステムと構造が似ているという点も親近感が湧きます。我々が普段使っている日本語の表記法は世界ではかなり特殊なんですね。
なぜマヤ文字の解読がそこまで遅かったのでしょうか。
・シャンポリオンのような超天才が現れなかったから。
・マヤ研究者には言語学や碑文学の下地がなかったから。
・なかなか十分な資料がそろわなかったから。
しかし最大の理由は、優秀な研究者が現れて新説を発表しても、すでにマヤ研究で有名になって業界に大きな影響力のあったエリック・トンプソンという人物によって潰されてきたからのようです。
従来の定説を否定したり、説得力のある根拠と新説を発表しても、それが彼の望んでいる方向性から外れていれば容赦なく否定されて、彼の信奉者からも嫌がらせを受け、業界から仲間外れの雑魚として扱われる始末。
昔の詩人の言葉やギリシア神話の引用を無限に投入して、相手の批判能力を封じ込める彼のやり方(信奉者たちの目にはそれが素晴らしい教養が発揮されていると映る)を前にして、新人研究者たちは心が折れて、戦わずして退散していく道を選ぶのです。
最悪ですね。
自分の古臭い価値観でしか新しいものを判断(評価)できず、
才能ある若者や、ある業界・分野の未来と発展を妨害し、保身のために新人はあらゆる手段を使って潰そうとしてくる大物人物のことを「老害」と表現したりしますが、
エリックはまさに死ぬ寸前までそれを体現してみせた人物だったようです。
迷惑!
そんな人間にはなりたくないものです。
しかし「老害」は自覚できません。
自分に理解できないことがあっても、短絡的に否定しないように気をつけるしかありません。
新しいことに出会っても安易に批判しないことですね。
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<余談>
ちなみに僕が「シャンポリオン」を初めて知ったのは『スプリガン』(皆川亮二・たかしげ宙)第1巻でした。主人公・御神苗優の幼馴染の山菱理恵が、シャンポリオンの再来といわれる言語学の天才なんですね。
そのせいで、この『マヤ文字解読』を読むまでは、シャンポリオンは女性だと思っていました。
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