【哲学・思想】『武士道』―外国人へ向けた丁寧な解説書
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『武士道』新渡戸稲造 / 訳:矢内原忠雄 / 岩波書店
岡倉天心の「茶の本」と同様、日本人に向けて書かれたのではなく、外国人に向けて日本文化・価値観を分かってもらいたいという意図で英語で出版された本を日本語訳したもの。
1899年に書かれたものらしいので、今から120年くらい前だ。
日清戦争直後。日露戦争目前の時期。
著者は当時38歳。それでこの内容を書かれたわけで、読んでみると恐ろしく博識なのが分かります。
外国人へ向けて、基礎の基礎から説明してあるので、2018年に生きる(武士道精神など持ち合わせのない)我々日本人にとっても非常に分かりやすい。
訳者の方がすごいのか、原書からすごいのか、とにかく文章がカッコイイ!
日本人であるなら、これくらいの日本語を使いたいと思わせてくれます。
『武士道』の解説として、外国に対して誇らしい内容でした。
現代人が解説してもここまで上手くできないでしょう。
武士道の構成要素として「義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義、切腹、仇討ち、刀」などについて各章ごとに語られています。
ただ、例を挙げる際にはギリシャ神話やシェイクスピアをはじめ西欧文学を採用されているので、無学な日本人の私には逆に分かりにくい点もありましたが・・。
あと、誤解していたのですが、「仇討ち」は殺されたのが自分の目上の人や恩人の場合はOKだが、妻や子供の場合はダメなんだそうです。
なんじゃそりゃあ!
まあ現代社会で武士道を体現しているような人は生きにくいとは思います。
時代の価値観が当たり前ですがズレています。
しかし、日本人の思想・価値観の根底にはまだかなり根付いているのも確か。
日本人の価値観がどういうふうに形成されてきたのかを外国人に説明しなくちゃいけない状況に置かれるかもしれません。
その時に何も説明できないと恥ずかしいので自分の価値観のルーツは確認しておくべきだなと思いました。
そういう状況になったから、著者はこの本を書こうと思い立ったそうです。