【小説】『カルカッタの殺人』― イギリス統治下のインドでテロ?【このミステリーがすごい2020・18位】
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『カルカッタの殺人』アビール・ムカジー / 訳:田村義進 / 早川書房
⇧2019年7月4日発売。
『このミステリーがすごい!2020年版』海外編・第18位にランクイン。
<イギリスのインド統治>
この小説の舞台は、イギリス統治下のインド・カルカッタ(コルカタ)です。
時代は今から100年前の1919年。
第一次世界大戦が終わってまもなくの頃です。
⇩(カルカッタはインド東部にあります)
イギリスは19世紀半ばから20世紀半ばまで、長きに渡ってインドを植民地支配してきました。
帝国主義全盛の時代です。
当時のインドでは飢饉が発生したり、不公平な関税政策によって国内産業が壊滅したりして、都市部の人間も貧しくなっていきました。
当然のことながら、インド人のイギリス人に対する反感は高まります。
そんな中、植民地政府は1919年にメチャクチャな法律を制定しました。
危険人物と思われる者を令状なしで逮捕し、裁判なしで投獄できるという「ローラット法」です。
当然、インド人からは猛反発に合います。
イギリス人に反抗的だと思われたら、有無を言わせず犯罪者扱いになってしまうからです。
1919年のインドの都市部では、こんな不条理な法律を振りかざすイギリス人に対して、いつ反政府暴動やテロが起きてもおかしくない空気が蔓延していました。
この小説では、そんな緊迫した状況のカルカッタで、イギリスの政府高官の殺害事件が起こります。
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<あらすじ>
主人公のウィンダム警部は、かつてスコットランド・ヤードの犯罪捜査部にいた優秀な刑事です。
彼は志願して第一次世界大戦に参加していましたが、終戦直前のドイツ軍との戦闘で被弾し、戦線離脱しました。
彼は戦時中に多くの戦友と兄弟を失い、妻をインフルエンザで亡くしたことで、生きる希望を失いました。
その後は阿片に手を出し、鬱々とした日々を過ごしていました。
そんなある日、かつての上司からインドの警察で働いてみないかと誘いがありました。
もうイギリスですべきことも未練もなかったウィンダムは、インドに行ってみることにしました。
1919年のインド・カルカッタにやってきた彼は、着任早々、重大な事件を任されます。
政府高官(イギリス人)の殺害事件です。
カルカッタにピリついた空気が流れているとはいえ、白人の他殺体が見つかるのはめったにないことです。
殺害された男の名前はアレグザンダー・マコーリー。
ベンガル州行政府の財務局長です。(副総督の側近)
今にも崩れ落ちそうな建物に囲まれた薄暗い袋小路で、彼は惨殺死体となって発見されました。
貧民街に来るにしてはキッチリ正装している点が不自然でしたが、何より奇妙なのは、口の中に丸めた紙片が押し込まれていたことです。
紙片にはベンガル語でこう書かれていました。
「これは最後の通告だ。通りにはイギリス人の血があふれるだろう。インドから出ていけ!」
どうやら犯人は、植民地政府に不満を持つインド人のようです。
さっそくウィンダムは部下たちと共に捜査を開始しようとしますが、現場の検証作業は軍の情報部が担当することになりました。
彼は捜査権を横取りされたわけです。
実は軍情報部には秘密の部局「H機関」が存在し、副総督が政治がらみだと考えた事件はすべてH機関の管轄下に置かれることになっていました。
そんな法律はないのですが、副総督が裁量権を発動し、なんでも望み通りにできます。
ウィンダムは捜査状況を上司に報告に行きますが、警察上層部は自分より早く事件の詳細を知っているようでした。
何やら裏にキナ臭い動きがあることが分かってきますが、彼は自分に課せられた捜査任務の主導権を奪われないよう、軍とは別に独自捜査を進めていきます。
果たしてウィンダムは、軍のH機関より早く、真相にたどりつけるのでしょうか。
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<まとめ>
1919年のカルカッタで起きた、イギリス高級官僚の殺害事件の謎を追うミステリーです。
最初は単純な殺人事件に思われましたが、徐々に差別や偏見、政治、経済、テロ、売春、阿片窟、列車強盗と関連事項が増えていき、話のスケールが大きくなっていきます。
イギリス人には詳しい話はしないけれど、インド人の警官には話すというインド人も多く、捜査はけっこう難航します。
イギリス人警部のウィンダムと、部下であるインド人刑事のバネルジーのコンビは、他のミステリーでは味わえない新鮮な相棒感があります。
ロンドン生まれのインド系移民である著者だからこそ描けた、リアリティ抜群の歴史ミステリーです。
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