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【小説・ミステリー】『元年春之祭』—ミステリー史上最恐・最哀の動機

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『元年春之祭』陸秋槎 / 訳:稲村文吾 / 早川書房

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⇧「このミステリーがすごい!2019」海外編第4位

本屋大賞2019で2位獲得。 

 

<文章がカッコイイ>

表紙がカッコイイ!中国人の作家さんです。 

文章もカッコイイ!中島敦『山月記』を思い出しました。

f:id:A-key-Hit:20181215213025j:plain←文章がカッコイイとはこういうことだというお手本。

 

ミステリーというジャンルにここまで文学性や格調高さを持ち込まなくても・・・と、カッコよすぎて冒頭から笑いそうになりました。

著者は古籍研究所古典文献学専攻の修士課程を修了しているそうで、中国古典の詩経や漢籍の膨大な専門知識を使って、濃密な世界観の構築に成功しています。

日本の新本格ミステリー作家たち(綾辻行人、辻村深月など)の作品やアニメも好きなのであろうことが、あとがきから分かります。そういった要素も作品内に込められていました。これが長編デビュー作だそうで、やはりよく言われるように、デビュー作には作家の全てが詰め込まれているのですね。

 

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<あらすじ>

 紀元前100年(天漢元年)の中国―前漢の時代。

(マンガ『キングダム』(原泰久)の時代から少し後です。)

かつて国の祭祀を担った貴族の名家・観一族。

彼らは今では、世間からの目を逃れるように、山に囲まれた深い渓谷に居を移して生活していました。

ある雪の降り積もる夜に、当主一家が斬殺されます。唯一の生き残りは父親に折檻されて、離れの小屋で軟禁されていた娘でした。従姉妹が現場を見たわけですが、谷から出ていく唯一の道には、雪の足跡は残っていませんでした。

家の外にあるのは、歩いてきた自分の足跡のみ。

一体犯人はどこへ消えたのか?

犯人や事件の詳細が分からないまま4年が経ちます。

 

見聞を広めるために諸国を回っていた豪族の娘、於陵葵(おりょう・き)は、観一族の住む谷へやってきます。そこで二つ年下の娘・観露申(ろしん)と仲良くなります。

露申は由緒ある名家の娘のくせに、三女だからという気楽さから、何の重圧も感じることなく無学のまま過ごしてきました。

葵は巫女の伝統的価値観と祖国の因習に縛られ、それらからなんとか逃れるために、中国古典の高い学識を獲得してきました。

二人は、身分も、生まれた境遇も、生活も、知識量も、対照的なのです。

葵は露申の無知蒙昧ぶりに呆れ、失望し、馬鹿にしつつも結局色々教えてあげます。

この二人が物語の主人公です。

葵がホームズ、露申がワトソン役です。

 

春の祭儀が行われる直前になって、衆人環視の密室状況で露申の叔母が斬殺されます。

次いで姉、そして客人の一人も殺されていきます。

アリバイがあり、動機が見当たらず、密室状況による犯行の不可能性が突破できない。

犯人は一体どこへ消えたのか?

そして4年前の事件の犯人と真相とは?

 

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<まとめ>

現代でなくても密室状況というのは作れるものなんですね。

舞台設定だけですでに「おお~すごい!」と感嘆しました。

 

 中国では、地の文とセリフに格調の落差があって不評だったらしいですが、頭の固い文芸評論家たちはどこの国にもいるということでしょう。

マンガやラノベが浸透した日本人との方が、この作品は親和性が高いように思えます。

葵と露申との会話の面白さもこの作品の魅力の一つなのに、それが理解できないとは逆に気の毒ですね。

 

この作品は、トリックというよりも殺人に至った動機が衝撃的すぎて、他の要素が霞んでしまうほどです。

なぜ、時代や舞台を紀元前100年に設定したのか。

唯一無二の動機が、この時代、この地域の人々にしか成立しないからです。

 

いや~すごい!

今年読んだミステリーで一番の衝撃作でした。

「このミステリーがすごい!2019」を読んでなきゃスルーしているところでした。

あぶなかった。「このミス」サンクス(^0^)/

 

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