【ビジネス】『一生、同じ会社で働きますか?』―転職にビビらない生き方
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『一生、同じ会社で働きますか?』山崎元 / 文響社
少し前までは、終身雇用とかいう幻想が世間でまかり通っていたというウワサを、
皆さんも耳にしたことがあると思います。
しかし現在ではそんなウワサを信じている人はいないでしょう。
今は「人生100年時代」と言われています。
しかし100年も続く企業はほとんどありません。
つまり人は一生のうち、望むと望まざるとに関わらず、何回かは転職という経験をする可能性が高いということです。
転職はもはや珍しいことではなく、誰もがやっている一般的な行動なのです。
昔は転職者といえば、
「一つの仕事で努力を続けられない、我慢ができない人」
「退職というドロップアウトをした恥ずかしい負け犬」
というイメージが多少付きまとうものでした。
今はそんな偏見はほとんど無いでしょう。
(「人間関係が原因で退職した」という理由を、次の会社の採用面接で言えば、
この人は人格的に大丈夫か?と疑われることはありますけど。)
偏見が少なくなってきたとはいえ、かと言って気軽に転職できるほど、
日本の転職市場はアメリカほど流動性があるわけではありません。
年収が下がることも、転職先が今よりも合わないことも十分ありえます。
気楽にできることではありません。
とはいえ、現状に不満を抱いていたり、今の会社(仕事)に将来性を感じなくなっていたり、やりがいを感じなくなっていたり、人間関係に悩んでいたり、実は少しだけ挑戦してみたい分野の仕事があったり、転職を選択すべき状況ではあるのにその勇気が出ないという方もおられるはずです。
リスクをまず考えてしまって、転職に躊躇してしまう方です。
これはそんな方の背中を押してくれる本です。
大企業といえど、数年先はどうなっているか分からない時代です。
今の会社に留まっていれば安心、ということはありえません。
これまで安定した仕事だと思われていたものがそうではなくなり、
テクノロジーが発達して今まで存在しなかった仕事が次々と生まれています。
去年は、AIに人間の仕事が駆逐されるという危機を煽る本がやたらと出版されていましたが、これからはテクノロジーと共存していくビジネスモデルもどんどん作られていくでしょう。
昔と比べたら、はるかに転職サイトもバラエティ豊かになりましたし、
転職市場も流動性が上がってきました。
転職の精神的および物理的ハードルが下がってきているのです。
やりたいことがあれば、大きなリスクを取らなくても挑戦できる環境が整ってきたのです。
「転職しない」と決め込んでいる方が、逆にリスクが高い生き方になってきたともいえます。
「いつだって次に移る準備は出来ている」という考え方こそ、現代に生きるビジネスパーソンにとって望ましい精神状態なのだと著者は説きます。
転職とはもはやひとつの「スキル」なのだと。
著者はこれまで12回の転職を経てきたそうです。
さすがに多すぎでは?とも思いますが、経歴や転職理由も記載されていますので、
それを読めば誰でも「なるほど」と経緯が納得できるでしょう。
転職理由も毎回違っていて、そういうパターンもあるのかと参考になります。
色んな転職を実際に経験されているので、文章に説得力があります。
一番感動した部分は
「時間、お金、自由は転職で交換できる」という著者の考え方です。
新卒のような若い頃は「お金」がまだ少ないから、自分の「時間」と「自由」を使って「お金」を稼ぐことになります。
しかし歳を重ねれば、「お金」の貯蓄はある程度できたけれど体力もなくなってきたから、年収を下げてでも、今度は自分の「時間」と「自由」を増やす生き方を転職することによって選択可能になる・・・というものです。
年齢とともにそういう仕事の選び方をしていけば、何も恐れることはないんじゃないかと思います。
自分が今一番大事なのは、お金なのか、時間なのか、自由なのか。
そこさえ見極められれば、転職も迷わないのではないでしょうか。
優先順位や行動指針が決まれば、勇気は自動的に湧いてきます。
また、自己啓発的な精神論だけでなく、転職先でどのように立ち振る舞えばよいのかといった、実用的な方法論(ビジネス作法・心得)も書かれていますので、まだ1回も転職したことがないけど迷っているという若い方にオススメの本です。