【小説】『路 ルウ』―台湾高速鉄道を巡る物語【2020年5月ドラマ化】
『路 ルウ』吉田修一 / 文藝春秋
⇧2015/5/8 発売(文庫版)
2020年5月からドラマ放送がスタートします。(NHK総合、土曜、全3回)
ドラマのタイトルは「路(ルウ)~台湾エクスプレス~」です。
主演は波瑠さん。
その相手役は、台湾のアイドルグループ飛輪海(フェイルンハイ)のメンバーであるアーロンさん。
他に、井浦新さん、寺脇康文さん、高橋長英さん、シャオ・ユーウェイさん、ヤン・リエさん、リン・メイシューさんらが出演されます。
<台湾高速鉄道について>
台湾高速鉄道をご存知でしょうか。
台北市・南港駅から高雄市・左営駅までの345kmを結ぶ高速鉄道のことです。
日本が新幹線の車両技術を輸出・現地導入した初めての事例です。
2001年から工事がスタートし、2007年に完成しました。
台湾高速鉄道は当初は2005年の完成予定でしたが、スケジュールの延長が繰り返されました。
その原因は、台湾が日欧混在システムを採用したことにあります。
つまり台湾高速鉄道で日本の技術が導入されたのは新幹線の車輛だけで、分岐器はドイツ製、列車無線はフランス製ものが使われているのです。
日本と欧州の足並みが揃わなかったことから、開発は遅れていくことになりました。
そもそも最初の契約の段階では、台湾は欧州連合と組んで新幹線事業を進める予定でした。
しかし1999年に台湾大地震が起きたことや、ドイツ鉄道が自国で脱線事故を起こしたことなどから、台湾は地震の多い日本の技術も導入する方針に転換しました。
この小説は、そんな台湾高速鉄道の建造計画が進む台湾が舞台です。
鉄道が出来上がってく過程と並行して、その近くで生活している人や鉄道事業に関わる人達の様子が描かれます。
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<あらすじ>
主人公は、大井物産の台湾新幹線事業部に勤める多田春香。
入社4年目の新人社員です。
彼女は東京生まれ神戸育ちで、台湾で暮らしたこともなければ留学経験もありません。
大学時代に一人で台湾旅行に行ったことがあるだけです。
1999年、日本の新幹線車両が台湾の鉄道で使われることが決まりました。
大事業に参加したかった春香は、台湾に転勤することを承諾しました。
彼氏は日本で働いているので、遠距離恋愛になります。
春香は台湾に住んでいるとはいえ、たまの休みには日本に帰って来て、家族や彼氏に顔を見せることは怠りません。
春香には台湾で忘れられない思い出がありました。
それは大学時代の一人台湾旅行で、ある青年と知り合ったことです。
青年は親切に色々な場所を案内してくれました。
別れ際に春香は青年から連絡先を書いた紙を受け取りますが、日本に帰国後にその紙を失くしてしまい、一切連絡が取れなくなってしまいました。
当時の春香は中国語は出来ず、英語もカタコトだったため、青年の名前すら分かりませんでした。
春香は再び台湾にやって来て、青年と巡った場所を探してみましたが、会えませんでした。
春香は、仕事をする中で台湾で親しくなった林芳慧(リン ファンホエ)に、旅行のエピソードを話していました。
5年も前の話なので、春香は今さら青年を探そうとはしていませんでしたが、芳慧は知人のツテを当たって地道に捜索を続けました。
やがて、春香の探していた青年は、現在日本にいて働いていることが判明します。
なんと二人ともお互いの消息が不明なまま、相手の国に行って働いていたわけです。
驚きのすれ違いです。
春香のエピソードだけではなく、他の登場人物の話も並行して描かれます。
春香の職場のワーカホリックな先輩・安西誠。
台湾高速鉄道が敷設予定の土地で暮らす青年・陳威志(チェン ウェイズ―)。
戦時中は台湾で生活し、現在は定年で建設会社を退職した葉山勝一郎。
彼らの人生が交差し、広大な物語が展開していきます。
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<まとめ>
建設中の台湾高速鉄道の周りで暮らす人たちの物語です。
メインは台湾新幹線事業部に勤める多田春香の話ですが、それだけに留まらない物語の広がりと豊かさがあります。
恋愛小説とも言えますし、大規模事業に関わるビジネス小説とも言えますし、歴史小説とも言えます。
爽やかなノスタルジーに浸りたい方におすすめの作品です。
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【小説】『ディア・ペイシェント』―理不尽な患者と向き合う医師たち【2020年4月~ドラマ化】
『ディア・ペイシェント 絆のカルテ』南 杏子 / 幻冬舎
⇧2020/1/24 発売(文庫)
2020年4月17日(金)からドラマ放送が開始されます。
(毎週金曜夜10時~、NHK総合、全10回)
主演は貫地谷しほりさん。
他に内田有紀さん、田中哲司さんらが出演されます。
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【小説】『ディア・ペイシェント 絆のカルテ』/ 理不尽な患者と向き合う医師たち【2020年4月~ドラマ化】
<モンスター・ペイシェント>
現在、「医療はサービス業」という認識が一般的になっています。
昔は「診てもらえるだけでありがたい」という感覚だったそうですが、いつの間にか医者優位の状況から患者優位の状況に変わりました。
病院同士が生き残りをかけてサービスの質で競争するようになったこともそうですし、患者たちが医療に対する満足度まで考えるようになったからです。
そんな中、「モンスターペイシェント」という言葉が生まれました。
モンスターペイシェントとは、医療従事者や医療機関に対して、自己中心的で理不尽な要求を繰り返す患者(やその関係者)のことです。
教育現場で教員たちを悩ませる「モンスターペアレント」の医療現場バージョンです。
幼稚でモラルの欠けた彼らの言動は、現場で働く医師や教員のやる気を著しく低下させ、その結果サービスの質が低下する悪循環を生み出します。
飲食店でよく見かけますが、「客の立場だから何を要求してもいい」と勘違いしている人がいます。
モンスターペイシェントも同様です。
「お金を払ったんだから、治せないのはおかしい」
「お金を払ったんだから、いくらでも時間をかけて患者に丁寧な対応をすべき」
「患者を満足させて帰すべき」
というような主張を医師に押し付けようとします。
それが叶わないと、暴れたり騒いだり訴えるぞと脅したりしてきます。
この小説は、そんなモンスターペイシェントと向き合う医師たちの物語です。
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<あらすじ>
主人公・真野千晶(ちあき)は、35歳まで大学病院で働いていました。
そして半年前、神奈川県川崎市にある民間の総合病院に、常勤内科医として転職しました。
大学病院では研究や教育の比重が大きかったのですが、市中病院で診療がメインの仕事になります。
毎日、診療に忙殺されるようになった千晶は、大学病院時代には無自覚だったあることに気付きました。
それは患者たちの不満です。
調子が悪くない患者ほど、病気以外のことにクレームをつけて来るのです。
「食事がまずい」「隣の患者のいびきがうるさい」「エアコンが効いていない」などの他に、観葉植物にまで文句を言う人もいます。
千晶は誠実で丁寧な対応を心がけてはいますが、外来患者を3種類に分けてとらえていました。
まずは【上】クラス。
要領よく病状を伝えてくれて、こちらの説明もすぐに理解してくれる患者です。
次に【中】クラス。
どんな薬を飲んでいるかとか、聞かれて当然の質問にも答えられなかったり、処方した薬をきちんと飲まなかったりする、悪気はないだろうけど世話の焼ける患者です。
そして【下】クラス。
来院した瞬間から災厄を振りまく患者です。
気に入らないことがあればすぐに騒ぎ暴れる人です。
「何かあれば訴えてやる」と最初から身構えている人もこれです。
千晶だけではなく他の医師たちも、医師の言うことを聞かずにすぐにクレームを入れる患者にうんざりしていました。
しかし病院の経営者は現場のこと理解せず、ひたすら「患者様プライオリティ」を医師たちに強要してきます。
他の病院のサービスと比べられてしまうからです。
ところが、病院の作ったモンスターペイシェントへの対応マニュアルは具体性がありませんでした。
ある日、千晶のもとに座間という患者がやって来ました。
彼は「眠れないので睡眠薬を処方して欲しい」と要求しました。
話を聞いた千晶は、最長期間(1ヶ月分)の処方を決めました。
しかし座間は「忙しくて病院に来れないから2ヶ月分処方してくれ」と言って譲りません。
諦めそうになかったので、千晶は仕方なく2ヶ月分を座間に処方しました。
ところが翌週に座間がまたやって来ました。
彼は「母親のヘルパーに睡眠薬を盗まれたので再処方してほしい」と言いました。
千晶は嘘だろうと思いましたが、座間が急に激怒したため、仕方なく同じ量を処方しました。
座間はその翌週には「ひったくりに遭った」と言い、
さらにその翌週には「ボケた母に捨てられた」と言って再処方を要求してきました。
千晶が反対すると座間は激怒して大騒ぎするので、千晶は毎回、渋々処方しました。
後日、座間がどんでもない騒ぎを起こします。
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<まとめ>
理不尽な要求を繰り返す患者と向き合う医師たちの物語です。
患者の悪質さには際限がなく、毎日様々なクレームに医師たちがさらされていることに驚かされます。
マジメに誠実に対応しようとするほど馬鹿を見る職場環境です。
ただでさえ激務なのに、精神的に病んで自殺してしまう医師がいるのもうなずけます。
医療は普通のサービス業とは違います。
何でもかんでも医療ミスだと患者が訴えていれば、医師はリスクのある挑戦をしなくなります。
そうすると、医療のレベルは下がっていきます。
モンスターペイシェントの存在は、百害あって一利なしです。
医師に対して感謝と労りの心を持とうと、強く思わせてくれる小説です。
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【マンガ】『クマ撃ちの女』―北海道の山でヒグマ猟にこだわる女
『クマ撃ちの女』安島薮太 / 新潮社
⇧1巻は、2019/7/9 発売。
最新刊の2巻は、2020/1/9 に出ました。
<狩猟漫画>
この漫画は「狩猟漫画」です。
狩猟漫画の数は、最近増えてきました。
例えば、『山賊ダイアリー』『罠ガール』『東京カリニク鉄砲隊』などがあります。
狩猟がメインではないですが、作中にそういったサバイバル要素を含めた『ゴールデンカムイ』のような漫画もあります。
◆『山賊ダイアリー』
岡本健太郎 / 講談社 / 全7巻(続編は『山賊ダイアリーSS』)
◆『罠ガール』
緑山 のぶひろ / KADOKAWA(電撃コミックスNEXT) / 1~4巻(続刊)
◆『東京カリニク鉄砲隊』
これかわ かずとも / KADOKAWA(角川コミックエース) / 全1巻
◆『ゴールデンカムイ』
野田 サトル / 集英社 / 1~20巻(続刊)
これから紹介する『クマ撃ちの女』は、ヒグマを専門に狙う狩猟漫画です。
ヒグマを狙うためのサバイバル知識が豊富に描かれています。
サバイバル漫画好きの方におすすめです。
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<あらすじ>
主人公は北海道の山で狩猟をしている31歳の女性・チアキ。
彼女が狙っているのはエゾヒグマです。
ヒグマを狙う理由は1巻では明かされません。
周囲の人間は、チアキの親しい人(肉親?)がヒグマに殺されたからだと思っているようですが、真相はまだ不明です。
チアキは去年、弱ったヒグマを一頭仕留めた実績がありましたが、今年はまだ一頭も撃っていませんでした。
猟期の間(二ヶ月)しか山に入れないため、チアキは毎日ヒグマを探して山に入っています。(※それ以外の期間はバイトで暮らしています)
サバイバル生活が好きなので、山中でキャンプすることもあります。
そんな彼女の顔に、誰かの仇討ちという悲壮感はありません。
実はヒグマは人に対して好戦的な動物ではなく、人の気配を感じると出会いを避ける傾向にあるので、探して見つけ出すのは難しいそうです。
しかし急にヒグマの前に姿を現せば、ヒグマは驚きと興奮で人間を襲います。
その日、チアキはヒグマの足跡を追跡してヒグマを発見しましたが、怖くて発砲出来ませんでした。
もし一撃で仕留め損ねたら、反撃にあって殺されるからです。
出版社で編集をしていた伊藤一輝は、退職してライターになりました。
彼は何か面白い題材はないかと探しており、チアキの事を知って同行取材を申し込みました。
女性が独りでクマ撃ちをしているのは珍しいからです。
シカなどの狙いやすい動物ではなく、なぜヒグマを狙っているのかにも彼は興味を持ちました。
伊藤は狩猟のことを全く知らないだけではなく、シカの解体ですら吐き気をもよおす有様です。
しかし彼が我慢して解体を手伝い終わると、チアキは同行取材を許可しました。
条件は山ではチアキの言うことを絶対に聞くことと、獲物を運ぶのを手伝うことです。
さっそく翌日から、二人はヒグマの捜索に出かけました。
果たしてチアキは、素人を連れながら、ヒグマを撃ち倒すことが出来るのでしょうか。
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<まとめ>
ヒグマを専門に狙う、女ハンター(チアキ)の話です。
なぜそこまでヒグマにこだわるのかは、1巻では明かされません。
彼女に密着取材するライターの伊藤の視点から、物語は描かれます。
ヒグマの追跡だけではなく、ヒグマの生態、銃の調整と本番での扱い方、シカの解体と料理など、様々なサバイバル知識が載っています。
著者の狩猟が好きだという気持ちが伝わってくる漫画です。
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【小説】『ワン・モア・ヌーク』―2020年の東京で原爆テロ【SF・ミステリー】
『ワン・モア・ヌーク』藤井 太洋 / 新潮社
⇧2020/1/29発売(文庫)
<テロを題材にした小説>
テロを題材にした小説では、二つの謎がストーリーを牽引します。
「どうやってテロを実行するのか」と、「なぜテロを起こそうとしたのか」という疑問です。
「誰が」「いつ」「どこで」「どういう」テロを起こすのかは、犯行声明が出されるので大体すぐに分かります。
テロは愉快犯とは違って、必ず目的があります。
目的とは「社会への何らかの訴え」です。
それは政治的イデオロギーや宗教、貧困など様々です。
その手法も人質、爆弾、自爆、核、バイオ(生化学)、サイバーテロなど多岐にわたります。
テロの方法は、その目的によって効果的なものが選択されます。
この小説では原爆を使ったテロが計画実行されます。
その詳細な方法は物語前半に語られ、動機が後半に語られます。
つまり前半がSFで、後半がミステリーです。
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<あらすじ>
イラクの核物理学者・イブラヒムは、小さな集落の地下にある核燃料の濃縮施設で、イスラム国の庇護の下、核兵器開発を行ってきました。
彼はアメリカを始めとした、彼の祖国を滅ぼした「持てる国々」に怒りを募らせており、仕返しをする機会を望んでいました。
そして2018年8月。
1年半をかけて分離した濃度70%のプルトニウム239が完成しました。
2020年3月。
イブラヒムはプルトニウムと一緒に東京にやって来ました。
彼は原爆を造ろうとしていたのですが、日本人女性・但馬樹(たじま いつき)がイブラヒムが想定していたよりも精度の高い設計を提案してきたため、彼女の案に乗ることにしたのです。
但馬はある目的のために、東京で原爆を造って爆発させる計画を練っていました。
但馬はモデルをやりながら、オーダーメイド衣料販売ベンチャーも経営しています。
彼女は英語もアラビア語も不自由なく話せます。
そして、過去に日本に落とされた原爆よりも精密な設計を、3Dプリンタで作り上げました。
但馬と空港で合流したイブラヒムは、才色兼備で何もかも持っている但馬が、なぜ原爆テロを起こそうなどと考えたのか不思議に思いました。
警視庁公安部外事二課の警部補・早瀬隆二に、中国政府からテロの注意喚起がありました。
対象人物の名前は、ムフタール・シェレペット。
彼女は中国の新疆ウイグル自治区出身で、2年半前から東京の警備会社で働いていました。
ウイグル人なら親戚の誰かは独立運動に参加しているに決まっているので、早瀬はテロ情報はガセネタだろうと推測しました。
早瀬はシェレペットを調べていくうちに、彼女の腕に注射痕があり、麻薬中毒のような痩せ方をしていることに気付きました。
そしてシェレペットは但馬と親しくしているようで、但馬に麻薬使用の様子は見られません。
不審に思った早瀬は但馬のことも調べ始め、但馬が原爆テロを計画していることに気付きます。
国際原子力機関(IAEA)の技官・舘埜健也とCIAのエージェント・シアリーは、日本に入る前からイブラヒムの動きを追跡していました。
そしてイブラヒムが但馬と接触して原爆を完成させた事を知り、原爆がどこで爆破されるのかと、爆発したらどれほどの規模で被害が及ぶのかを計算し始めました。
もちろん原爆の解体方法や、起爆装置が作動しても爆発させない方法も探ります。
テログループ、警察、研究者の3つの視点から原爆テロの様子が描かれていきます。
果たして、どうやって爆発を阻止するのでしょうか。
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<まとめ>
2020年3月、東京で原爆を使ったテロが計画実行されます。
原爆を造る方法は詳細に描かれています。
専門家が集まれば、けっこう簡単にできることが分かります。
非常にリアルで怖いです。
この小説で重要なのはテロの方法ではなく、犯人がテロを起こした動機です。
日本人の危機意識の低さや、政府やマスコミのいい加減さについて考えさせられる作品です。
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【マンガ】『AKECHI』全3巻―名探偵・明智小五郎(現代版)
『AKECHI』イイヅカケイタ / 集英社
⇧1巻は2018年12月19日発売。
最終巻の3巻は、2019年6月に出ました。
<現代版・明智小五郎>
明智小五郎をご存知でしょうか。
江戸川乱歩の小説に登場する名探偵です。
『名探偵コナン』の毛利小五郎の名前の元にもなったキャラクターです。
この『AKECHI』という漫画は、乱歩の「明智小五郎シリーズ」を原作として描かれています。
主人公はもちろん明智小五郎ですが、設定を多少変更してあります。
原作では大正の終わり~戦後10年くらいまでが舞台ですが、『AKECHI』では現代(平成)が舞台です。
明智が大正時代からずっと生きているわけではなく、「平成生まれの名探偵」という設定です。
原作の明智は、定職を持たない書生から探偵事務所を構える名探偵へと出世していきますが、『AKECHI』では古書店の店主として暮らしています。
乱歩が作家になる前は古書店を経営していたので、そういう設定になったのかもしれません。
基本的には原作をベースに描かれているのですが、上記のように細かな設定部分を変更してあるので、原作を知っている方でも楽しめます。
もちろん原作を未読の方も、普通のミステリー漫画として楽しめます。
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<あらすじ>
東京都千代田区にある世界最大の古本街・神保町。
そこで古本屋の店主として明智小五郎(25歳)は生きています。
彼は幼少期に両親を亡くし、1年で3回も保護者が変わり、最終的に古書店を営む祖父の元で育ちました。
明智は小学生の頃から抜群の推理力を持っていました。
その当時は、簡単に他人の秘密を暴いてしまうことから、周囲から気味悪がられていました。
真相を見抜くのがあまりにも早かったことから、給食費を盗んだ犯人だと誤解されることもありました。
そのせいで人間嫌いになりかけていました。
学校で周囲から浮いていた明智を救ったのは、担任の小林先生でした。
小林だけが明智の才能を褒めたたえ、「人を助ける名探偵」になることを勧めました。
そして、クラスメートの波越英一郎が「少年探偵団」を結成しようとしているので、一緒にやってみるよう言いました。
それ以来、明智と波越は親友になりました。
波越は現在、捜査一課の刑事です。
彼は捜査に行き詰まると、いつも明智に相談に行きます。
今回もまた、決定的な証拠をつかめずにいる事件を抱え、明智古書店を訪れました。
事件の被害者は専業主婦の佐藤美禰子。
彼女は自宅の部屋に隠れていた男に、包丁のようなもので後ろから刺されて意識を失い、病院に運ばれました。
目を覚ました彼女の証言では、男の顔も背丈も分からないそうです。
凶器は見つかっておらず、犯行のあった部屋の窓ガラスは割れていました。
容疑者は3人います。
家の別の部屋で読書していたという夫・寅雄。
美禰子の元カレである、巨漢のコックの関根。
同じく美禰子の元カレである、金属加工業をしている青木。
全員アリバイはありません。
しかし決定的な証拠もありません。
波越の説明にあまり興味を持てなかった明智でしたが、美禰子に脅迫状が届いたという連絡が波越のスマホに入り、二人は美禰子の自宅に行ってみることにしました。
果たして犯人は、警察が絞った容疑者の中にいるのでしょうか。
そして凶器はどんなものなのでしょうか。
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<まとめ>
江戸川乱歩の生み出した名探偵・明智小五郎を、現代に生まれさせたらどんな活躍をするでしょうか。
そんな想像を具現化した漫画です。
原作ではPCやスマホ、ドローンは出てきませんが、『AKECHI』では出てきます。
犯行の手口は技術の進歩で変化していきますが、人間が犯行を起こす動機は100年経っても変わらないことが分かります。
絵が非常に上手く、見ているだけで楽しめる作品です。
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【小説・ミステリー】『啄木鳥探偵處』―探偵は石川啄木、相棒は金田一京助【2020年4月~アニメ化】
『啄木鳥探偵處』伊井 圭 / 東京創元社
⇧2008/11/22 発売。(文庫)
2020年4月13日からアニメ放送が開始されます。
TOKYO MX、BSフジ、CSファミリー劇場ほか、各配信サイトで放送されます。
主人公の石川啄木役は浅沼晋太郎さん、
その相棒の金田一京助役は、櫻井孝宏さんが担当されます。
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【小説】『啄木鳥探偵處』/ 探偵は石川啄木、相棒は金田一京助【2020年4月~アニメ化】
<石川啄木について>
この小説はミステリーであり、探偵役は石川啄木です。
石川啄木は明治時代の歌人(詩人)です。
彼は中学時代から短歌にハマり、文学を志しました。
やがて彼の短歌や詩の才能は、業界で認められます。
しかし若い頃から結核を患っていたため、27歳で亡くなりました。
啄木は中学時代に、一学年上の金田一京助と知り合いました。
金田一京助はアイヌ語研究の創始者となった、民俗学者でもあり言語学者でもある人物です。
啄木の生活がいつも困窮していたため、金田一は長い間資金を援助し続けました。
啄木は生活費を稼ぐために小説も出版しましたが、売れませんでした。
彼は金田一だけでなく、色んな人から借金をしていました。
この小説では、そんな石川啄木と金田一京助が主人公です。
啄木が貧しい生活から脱出するために探偵稼業を始め、金田一がそれをサポートします。
明治の東京が舞台の本格ミステリーです。
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<あらすじ>
この小説は、5話構成の連作短編になっています。
大体、時系列順になっています。
1話目の『高塔奇譚』で、第3回創元推理短編賞を受賞しました。
以下ではそちらを紹介します。
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明治42年8月。
「浅草十二階」とも呼ばれる「浅草凌雲閣」で、幽霊がたびたび目撃されました。
幽霊は、凌雲閣の近くの映画館が終了となる直前に出没し、凌雲閣の消灯時間とともに消えてしまいます。
凌雲閣は観光目的の高層建築ですが、この時はすでにブームが過ぎ去っていました。
しかし幽霊の話題が新聞で広がるにつれて、人々はまた凌雲閣に注目するようになりました。
売れない作家・石川啄木は、貧しい生活の足しにしようと探偵稼業を始めました。
彼は凌雲閣の幽霊について興味を持ち、関連する新聞記事を集めました。
1ヶ月後、啄木は探偵助手の金田一京助を誘って、幽霊のウワサがある凌雲閣に行ってみました。
問題の時間帯に凌雲閣を見上げた二人は、実際に幽霊の姿を目にしました。
ある日、啄木の探偵事務所『啄木鳥探偵處』に、ヤクザの六郎が訪ねてきました。
六郎は一連の幽霊騒動は、凌雲閣の界隈で興行している誰かの仕業だと考えていました。
最近の大衆は、映画館を始めとした建物の中の娯楽を求めるようになり、外でしか稼ぎようがない芸人たちが食べていけなくなっているからです。
六郎は犯人の心当たりがある人間を当たってみると言い、何か分かったら知らせるから、それまであまり深入りするなと啄木たちにクギを刺しました。
そんな脅しを気にせず、啄木は幽霊の新聞記事を書いた山岡に話を聞きに行きます。
六郎の心当たりとは、幻燈技師であり活人形師でもある松吉でした。
松吉のことを知った金田一は、松吉が凌雲閣に幽霊を投影させていると推理しました。
ところがその後、松吉は何者かに殺害されました。
果たして、犯人は誰で、幽霊はなぜ出現したのでしょうか。
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<まとめ>
石川啄木と金田一京助がコンビを組んで、探偵稼業を始めます。
探偵役は啄木で、助手役は金田一です。
啄木のワガママぶりと、金田一の献身ぶりも見所です。
明治の東京が舞台となっており、当時の風景描写が巧みです。
文章は丁寧かつ流暢で、明治の雰囲気とマッチしています。
京極夏彦作品と通じるものを感じました。
【京極堂シリーズ】が好きな方におすすめです。
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【マンガ】『川島芳子は男になりたい』1巻―男の冒険に憧れる女【愛新覚羅顕㺭】
『川島芳子は男になりたい』田中 ほさな / 講談社
⇧1巻は、2020/1/9発売
<性別の入れ替わり>
漫画やアニメでは、主人公の意識や記憶はそのままで、性別が入れ替わる作品が数多くあります。
例えば、 『らんま1/2』『君の名は』『山田くんと7人の魔女』『思春期ビターチェンジ』『WHITE NOTE PAD』『オレが腐女子でアイツが百合オタで』などです。
自身の性別が変更されるだけの場合もあれば、他の人物と身体が入れ替わる場合もあります。
性別入れ替わり漫画の特徴は、主人公たちがそういう体質や境遇を不本意だと思っている点です。
つまり、なりたくて性別を変更しているわけではないのです。
彼らは仕方なくそういう状況を受け入れて、周囲の人間に気づかれないように気をつけたり、以前までの自分に近づけた生活を送ろうとします。
身体が変わってしまった自分と本来の自分とのギャップが、このジャンルの作品の面白さと言えます。
一方、これから紹介する『川島芳子は男になりたい』の主人公は、性別を変更したいと積極的に考えています。
「周囲の人間にバレないように・・」といった心配は一切しません。
逆に、自分は男であると名乗るほどです。
珍しいタイプの漫画です。
ちなみに、川島芳子(1907~1948)は実在の人物です。
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<あらすじ>
1924年11月。
17歳になった川島芳子は、日本から上海に渡ってきました。
すべてが手に入るというこの街で、長年の夢を叶えてもらおうと考えたのです。
それは、「男になる」という望みです。
川島芳子は、上海の【王】がいるサスーン商会を訪れました。
【王】と面会が叶い、自分の望みを伝えたところ、事情を話すよう言われました。
川島芳子には二人の父がいました。
愛新覚羅善耆(あいしんかくら ぜんき)と川島浪速です。
前者は清の粛忠親王(皇族)で、後者は満蒙独立運動の先駆者です。
芳子は二人の薫陶を受けて育ちましたが、自分が女であることから、その教えに従って生きられないことを悔しく思っていました。
本当は国家の大業を担うような冒険がしたくて、父たちが誇れるような男になりたかったのです。
事情を聞いた【王】は、芳子の願いを叶えてあげることにしました。
まずはお試し期間として、一時的に男になる施術が提案されます。
完全に女を捨ててから後悔しても、取り返しがつかないからです。
芳子は覚悟を見くびられたようで少々不服でしたが、本手術は費用が高いこともあって渋々承諾しました。
そして彼女は催眠術によって、ある条件を満たした時のみ男の身体になる体質になりました。
【王】は芳子に、施術の代価としてある仕事を要求しました。
清朝最後の皇帝・溥儀を、紫禁城から逃がそうとしている軍人の手伝いです。
清が滅んでから溥儀はずっと軟禁されており、彼を自由の身にすることが、芳子に課せられたミッションです。
国家の大業や冒険に憧れていた芳子にとって、それは願ってもないことでした。
芳子はさっそく手伝いをする人物・田中隆吉と合流します。
そして自分が、清朝の皇族・第10
芳子は自分が溥儀救出作戦の役立つはずなので、田中の弟子にしてくれるよう頼みました。
しかし田中は「女には危険すぎる」と言って、芳子が作戦に参加することを断りました。
芳子は諦めきれず、田中の後をこっそり付け回します。
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<まとめ>
国家の大業を担うような冒険に憧れる主人公・川島芳子。
彼女は条件を満たせば男の身体になれる手術を受け、清朝最後の皇帝・溥儀を救出する作戦に参加します。
芳子が憧れているのは男の肉体ではなく、男の生き方や社会的役割です。
女として差別されることがなければ、女として生きていたでしょう。
彼女は男であり女でもある体質をうまく使って、スパイとして立身出世していきます。
川島芳子は実在の人物なので、今後史実をどう解釈して描かれていくのか楽しみです。
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【小説・ミステリー】『パレートの誤算』―ケースワーカー殺人事件【2020年3月~ドラマ化】
『パレートの誤算』柚月 裕子 / 祥伝社
⇧文庫版は、2017/4/12発売。
2020年3月7日からドラマ放送がスタートします。(WOWOW)
主演は橋本愛さん。
他に増田貴久さん、北村有起哉さんらが出演されます。
<ケースワーカーとは>
この小説では「ケースワーカー」が題材になっています。
ケースワーカーとは、生活保護受給者の住居を定期的に訪問し、必要な支援を行う行政の担当者のことです。
生活保護受給の判定から始まり、家庭環境や状況の調査、就労指導が主な仕事です。
他には、介護や不登校児童などの相談も扱っています。
ケースワーカーの人手は不足しています。
それだけ生活保護の受給者が増えているとも言えます。
そのため、社会福祉法ではケースワーカーの標準担当世帯数は80とされていますが、それ以上の受け持ちを抱えている人もいます。
彼らはただ受け持ちの世帯を定期的に訪問していればいいわけではなく、新しい生活保護申請者の書類整理や、病気や金銭トラブルを抱える受給者からの問い合わせの電話に対応しなければなりません。
大変な激務なので、身体を壊す人もいます。
生活保護の不正受給は論外ですが、
受給の権利を獲得した者の中には、現状から抜け出す意志がなく、酒やギャンブルや必要以上の娯楽に使ってしまう人がいます。
「支給されたお金をどう使おうと自由だ」という意見もありますが、市民の税金がそんなことに使われれば、大抵の人は憤りを覚えるでしょう。
ケースワーカーの人でも、そんな人間の住居を訪問して相談を受けるなんて、憂鬱な気分になって当たり前です。
この小説では、そんなケースワーカーが殺害される事件が起こります。
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<あらすじ>
主人公は2ヶ月前に市役所に就職した牧野聡美。
彼女は地元の福祉大学で社会福祉士と児童福祉司の資格を取得し、卒業後、ダメ元で受けた採用試験に合格したのです。
彼女が配属されたのは福祉保険部社会福祉課で、生活保護に関わる業務を任されました。
聡美は生活保護受給者に対して、嫌悪感を抱いていました。
彼らを一括りにしてはいけないとは分かっていますが、税金を酒やギャンブルで使い果たす人間に憤りを思えていたので、そういう人達と関わりたくなかったのです。
彼女は今までは配属されて間がなかったので、デスクワークだけの仕事でした。
しかし「これからはケースワーカーの仕事も覚えるように」と上司に言われ、気が重くなりました。
聡美は昼休みに、先輩の山川からアドバイスをもらいました。
山川は職場で誰からも尊敬されている人物で、ケースワーカーとして受け持ち世帯は160(標準の2倍)を超えていました。
彼はケースワーカーの仕事はハードだけど、やりがいのある仕事でもある経験談を示しました。
聡美は山川に説得される形で、午後から生活保護受給者の家庭訪問に向かいました。
聡美は先輩の小野寺と一緒に行動しました。
彼女たちは、各訪問先で受給者の体調や就職活動状況を質問していきます。
そしてその日の予定の訪問を終えて、市役所に戻りました。
一方、別の担当地区を回っているはずの山川は、まだ帰ってきていませんでした。
いつもなら帰って来るはずの時間なのに、連絡すらありません。
やがて、山川が訪問しているはずの受給者が住むアパートで、火事があったと知らされました。
聡美は山川に電話してみますが、つながりません。
心配になった聡美と小野寺は、火事のあったアパートに行ってみました。
アパートはまだ燃えており、そこから山川の遺体が発見されました。
遺体は焼けていましたが、死因は焼死ではなく撲殺―つまり他殺でした。
問題のアパートには8世帯が入れるようになっており、事件当時は6世帯が入居していました。
全員一人暮らしで、全員生活保護受給者です。
6人のうち5人は、警察が連絡を取れました。
残り一人の行方は分かりません。
聡美と小野寺は、尊敬していた山川の死の原因を探るべく、アパートの元住人達に聞き取り調査を行います。
果たしてケースワーカーの山川は、誰になぜ殺されたのでしょうか。
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<まとめ>
生活保護受給者の住居を定期的に訪問するケースワーカーが、訪問先のアパートで殺害されます。
被害者の同僚だった主人公(聡美)は、上司や警察に内緒で、犯人と犯行動機を探ります。
調査の過程で、新人ケースワーカーの聡美は生活保護の深い闇を知ることになります。
良い子ぶった聖人のようなケースワーカーではなく、嫌な事や不快な事は顔に出てしまう、主人公の普通の人間っぽさに好感が持てます。
ケースワーカーの仕事と、生活保護の実態を知ることが出来る社会派ミステリーです。
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【マンガ】『時間停止勇者』1巻―異世界でも最強なのは時間停止能力!
『時間停止勇者』光永康則 / 講談社
⇧1巻は2020/1/9 発売
<最強の特殊能力とは>
この漫画のジャンルは「異世界転生もの」です。
異世界転生ものの主人公には、大きく2種類あります。
・圧倒的な才能や強さを最初から付与されているけれど、その発動条件が厳しく設定されているパターン
・才能や強さは平均以下だが、1つだけ特殊な能力(知力、情報も含む)があり、それを使って強敵とも渡り合うパターン
この漫画は後者にあたります。
この漫画の主人公の能力は「時間停止」です。
これは最強と言っていい能力です。
相手の攻撃を受けることなく、こちらが好きなだけ攻撃できるからです。
逆にもし敵に時間を止められる者がいた場合、主人公側はほぼ負けが決まります。
『ジョジョの奇妙な冒険』第三部のように、同じ能力者が現れない限り、時間停止能力者は無敵なのです。
無敵であるがゆえに、時間停止能力には大抵制限やペナルティが設定されています。
数秒間しか時間を止められないとか、能力使用後には疲労で動けなくなるとか、寿命が縮むとか、肉体の一部が破損するとかです。
つまりやたらと連発できないような設定です。
しかしこの漫画では、そういった制限はありません。
主人公には最強の能力が与えられたのです。
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<あらすじ>
主人公・葛野セカイは、ふざけてネットに上げた写真がSNSで炎上し、もう現実にはいたくないと強く思いました。
すると彼は、見知らぬ草原に飛ばされました。
しばらく歩くと街がありました。
そこには中世ファンタジーゲーム風の人達がいました。
葛野の手には、なぜかゲームのコントローラーがありました。
そこで彼は、自分がゲームの世界に転移させられたことを確信しました。
コントローラーには何か意味があるはずだと、色々ボタンを押してみました。
しばらく何も起こりませんでしたが、中央のスタートボタンを押した瞬間、周囲が動かなくなりました。
どうやらポーズがかかった(時間が停止した)ようです。
「時間停止」という無敵の能力を手に入れた葛野は、浮かれて舞い上がりました。
それからなんか悪そうなオジサンからお金を盗み、ごちそうを食べて、一番いい宿に泊まりました。
翌朝、彼は異変に気付きました。
視界の端に1秒ごとのカウントダウンが表示されているのです。
それは何かの制限時間を表していることは、容易に想像できました。
表示はあと50時間、つまり約3日です。
自分のいる世界がゲームだとしたら、制限時間が「0」になるまでに何かをクリアしろということです。
しかし葛野には、タイマーが「0」になった時に何が起きるのか分かりません。
マリオなら1機失うだけですが、彼に残機があるのかは不明です。
つまり死ななきゃ分からないわけですが、死んで確かめることなど出来ません。
彼は急いでボス的な何かを倒すイベントを探し回ります。
街には、死刑囚と狂暴なモンスターを戦わせるというイベントがありました。
葛野はそれがステージボスだと推測しました。
つまり、そいつを倒せばステージクリアになるはずだと考えました。
彼は犯罪を犯したと嘘をついて自首し、わざと死刑囚になりました。
そして死刑執行の時がやって来て、彼は闘技場に連行されました。
狂暴なモンスターとは、巨大な蟲でした。
葛野はとりあえず時間を止めて剣で斬りかかりますが、蟲の体表が硬くて剣が折れてしまいました。
彼には他に武器もないですし、体力は並以下で、魔法力はゼロです。
果たして葛野は、どうやって強大なモンスターを倒すのでしょうか。
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<まとめ>
異世界に転送され、時間停止能力を付与された主人公(葛野)が、制限時間までにステージクリアを目指します。
ステージ(クエスト)の内容は不明です。
だからそれっぽいイベントを探して、ボスっぽい敵を倒していきます。
けれどカウントダウンは止まりません。
葛野は最強クラスの能力を持ってはいますが、不死身でもなく、防御力はゼロに近いので、一度でも攻撃をまともに受けたらアウトです。
そんなギリギリの状況で、彼はふざけながら異世界に適応していきます。
タイマー「0」を回避しようと奮闘する、主人公の先行きが楽しみです。
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【小説】『騙す衆生』―詐欺稼業で人生逆転を狙え【このミステリーがすごい2020・7位】
『騙す衆生』月村 了衛 / 新潮社
⇧2019/8/27発売(バードカバー)
『このミステリーがすごい!2020年版』国内編・第7位にランクイン。
<豊田商事事件>
この小説は1980年代前半に起きた「豊田商事事件」がモデルになっています。
豊田商事事件とは、豊田商事による組織的詐欺事件のことです。
高齢者を中心に全国で数万人が被害に遭い、被害総額は2000億円といわれています。
これは日本で史上最大規模の詐欺事件です。
この詐欺事件は社会問題化し、豊田商事会長はマスコミの目の前で殺害されました。
詐欺で用いられた手法は、現物まがい商法です。
顧客は金の地金を購入する契約を結びますが、会社は現物の代わりに証券を引き渡しました。
顧客は現物を確認できず、最終的には効力を持たない紙切れ同然の証券が手元に残るだけです。
被害に遭った多くの老人たちは、この詐欺で老後の蓄えを失ったそうです。
ちなみに豊田商事は、トヨタ自動車とは全く関係ありません。
豊田という社名にすることで、トヨタ自動車の関連会社であると錯覚させようとしたのです。
この小説は、豊田商事会長が殺害された後の、豊田商事の残党たちの物語です。
会長の死亡により豊田商事は倒産することになりますが、詐欺で荒稼ぎした快感が忘れられない元社員たちは、新たに詐欺会社を設立して再び大儲けを狙います。
(※小説内では豊田商事の社名が、横田商事に変更されています。)
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<あらすじ>
主人公は横田商事の末端営業マン・隠岐隆。
彼は横田商事が悪辣な詐欺商法を働いていると知っていながら、高い給料に惹かれて入社してしまいました。
ところが彼が入社して5ヶ月後、社長がマスコミの前で殺害されました。
これにより、すでに社会問題になっていた横田商事は倒産しました。
5年後の平成2年。
隠岐は小さな事務用品メーカーの営業マンとして、妻と二人の娘を養っていました。
隠岐の営業成績はいつまで経っても上がらなかったので、同僚からはバカにされ、隠岐自身も虚しさを抱えながら仕事をしていました。
とはいえ、詐欺稼業から足を洗ってまっとうな仕事に就けたことに、安心もしていました。
ある日、隠岐は居酒屋で因幡という男と再会しました。
因幡は元横田商事の社員です。
彼は隠岐に、二人で会社を立ち上げようと提案してきました。
因幡が手掛けようとしているのは、茨城の山奥の広大な土地を「値上がりする」と偽って売りつける原野商法(詐欺)です。
二度と詐欺に手を染めるつもりはなかった隠岐でしたが、今の会社にいても先行きが見えないので、因幡の提案に乗りました。
隠岐と因幡は、県庁の地域計画課の課長を巻き込み、次々と資産を持つ一般人と契約を結んでいきます。
本物の県庁職員の話なので、みんな面白いように騙されていきます。
隠岐は、事務用品の営業をしていた時には感じられなかった興奮を覚えました。
まっとうな仕事よりも詐欺の方が、明らかに才能があったのです。
やがて県庁の課長が末期ガンで亡くなり、隠岐たちは原野商法から手を引きました。
次に隠岐たちが考えた詐欺は、和牛商法です。
顧客は牛を購入し、年間の配当をお金ではなく牛肉で受け取ります。その牛が売れればその売上げももらえるという仕組みです。
実態は一頭の牛に何十人もの顧客を重複させているだけで、個人が所有している牛は存在しません。
しかしわざわざ遠くの牧場まで自分が購入した牛を確認しに行く顧客はいないので、詐欺が露見することはありません。
和牛商法でも順調に利益を生み出していく隠岐と因幡。
彼らの周りには、かつて横田商事で働いていたメンバーが集まって来て、会社の規模はどんどん大きくなっていきます。
果たして、彼らの行きつく先はどんな場所なのでしょうか。
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<まとめ>
昭和の大規模詐欺事件を起こした豊田商事の残党たちが、再起をかけて新たに詐欺ビジネスを始めます。
登場する詐欺師たちは全員クズなのですが、主人公の隠岐だけは老人を喰い物にする詐欺だけはしないとこだわりを持っています。
しかし隠岐も莫大な借金を抱えており、家族の生活を守るために詐欺行為から抜けられません。
運悪く(運よく?)隠岐に詐欺の才能があったがゆえに、詐欺ビジネスは上手くいってしまいます。
果たして詐欺で大儲けして、人生を逆転することが出来るのでしょうか。
終着点が気になる、ノンストップ・サスペンスです。
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