【マンガ】『ゾン100』1巻―最高に幸せで楽しい不謹慎
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『ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと』麻生羽呂・高田康太郎 / 小学館
⇧2019年3月19日発売。
<ブラック企業>
あなたはブラック企業に勤めたことがありますか?
僕はあります。
1日の労働時間は14~17時間で休憩なしでした。
(食事はスキマ時間に各自の判断でサッと済ませる。)
休日は月2~4回。
1ヶ月で残業時間は180時間くらいでした。(残業代は一切ありません)
つまり総労働時間は360時間くらいだということです。
1年半程勤めて辞めましたが、僕が退職したあとに過労死された方もいました。
こういったブラック企業のニュースが流れるたびに、よく知らない人は
「そんな所、辞めればいいじゃん」と言います。
まあその通りなのですが、そういう判断力が失われるほどに精神が追い込まれていることは理解されていません。
会社としてはダメなのでしょうが、先輩や同僚が全員クズだというわけでは決してありません。むしろ良い人が多いです。彼らも必死に耐え抜いているのです。
自分が抜けたらもっと悲惨な状況になるという責任感から、今会社を辞めるという選択肢が頭に浮かばないのです。
マジメな人ほどそうなりがちです。
社会のことを知らずに新卒で入社してしまった場合もそうです。
他と比較できないので、今いる場所で頑張らないといけないと思ってしまうのです。
僕もこのマンガの主人公もまさにそのパターンでした。
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<あらすじ>
主人公・天道アキラ(24)は憧れだった制作会社に新卒で入社しました。
歓迎会を開いてもらった初日から、帰宅できないほどの残業を割り当てられます。
結局、初めて会社から帰宅できたのは二日後でした。
アキラは「ブラック企業」だと気付きはしましたが、
「自分がやりたくて選んだ会社だろ!苦労してもらった内定だぞ!
気合いだ!根性だ!」
と自分に言い聞かせてがんばり続けます。
気付けば3年目を迎えようとしていました。
会社に行きたくないという思いは入社当初から変わっていません。
無茶な注文を期限ギリギリに追加してくるクライアントと、気分で指示が変わる上司に疲れはて、「駅のホームから飛び込んだら会社に行かなくて済むのに・・」とまで考える段階まで来ています。
末期ですね。
ある日マンションの管理室を訪ねたところ、管理人がゾンビになっていて襲いかかってきました。
突然のことで何がなんだか分からないまま、ひたすら逃げるアキラ。
周りを見渡せば、街全体にゾンビが跳梁跋扈している状況でした。
そのときにアキラは気付きます。
「今日から会社に行かなくてもいいんじゃね?」と。
そして大量のゾンビに追いかけられている絶望的な状況にもかかわらず、
「やったー!!」
と大声で叫びます。
おそらくその日に世界中の誰よりも喜んだのは彼でしょう。
(冒頭の映画の登場人物との対比が見事です。)
街では阿鼻叫喚の嵐が吹く中、アキラは希望に満ちあふれていきます。
「これまでやりたくてもできなかったことリスト」を作り、ゾンビに襲われて死んでしまうまでに、全部やり尽くそうと行動を開始しました。
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<新しいゾンビもの>
「ゾンビもの」は、ほぼ例外なくシリアスなホラーかパニックサスペンスです。
「サバイバルもの」と言い換えてもいいと思います。
主人公を含めた生存者たちは、とにかく生き延びることだけに全力を尽くします。
一日でも長く生きるために、住む場所や食糧の供給や配分について頭を悩ませます。
世界がそうなってしまった原因を究明して、なんなら救世主になる展開もありえます。
このマンガは全く新しい「ゾンビもの」を開拓しています。
ホラーの要素もありますが、メインテーマではありません。
主人公・アキラは世界を救おうなんて考えていませんし、原因究明にも今のところ興味がありません。
死なないように逃げてはいますが、生き延びることが最優先事項ではありません。
「死ぬまでにしたいことリスト」に書いたことを実行していくことが最優先です。
例えばこんなことです。
1.好きだった人に想いを告げる
2.部屋の大掃除をする
3.昼間からビールを飲んでダラダラする
4.大型バイクを乗り回す
8.オーロラを見る
14.スカイダイビング
19.油絵を描いてみる
32.親友と朝まで飲んでバカ騒ぎする
などです。
アキラはリストをとりあえず33個目まで作りました。
その後はただひたすらに楽しそうにリストを消化していきます。
ゾンビばかりの街で、こんなに幸せそうに過ごせる人間は彼だけでしょう。
「会社にいるときと比べたら天国」だと感じているのだから当然です。
(他の生存者たちはどうしようもない現実に絶望しているだけです。)
これはゾンビを題材にした、全く新しい希望の物語なのです。
世間にはブラック企業とまではいかなくとも、日々の仕事に追われてやりたいことが一切できないまま時間だけが過ぎて行って絶望しかけている人も大勢いると思います。
そういう方は「会社に行かなくて済んだら、好きなことができるのに・・・」と考えたことも一度や二度ではないはずです。
このマンガは
「世界の終わりがやって来ることを待たなくても、
自分のやりたかったことを今のうちにやってもいいんだぜ」
という最高の応援歌になっています。
今年一番、興奮と共感を覚えたマンガでした!!
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