【マンガ】『天を射る』1巻―天下一の射手
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『天を射る』西荻弓絵・飛松良輔 / 小学館
⇧2019年4月26日発売。
<堂射>
「 堂射」(どうしゃ)という言葉をご存知でしょうか。
「通し矢」とも呼ばれ、京都の蓮華王院本堂(通称・三十三間堂)の西軒下約120mを矢で射通す、江戸時代にあった競技です。
庇(ひさし)にも床にも矢を当てずにその距離を射通すわけです。
現在の弓道の競技では、的までの距離は近的競技で28m、遠的競技で60mなので、どれだけ難しいか想像できますね。
これを一昼夜、間断なく矢を射続け、どれだけの本数が通ったのかを競います。
通し矢は江戸時代のオリンピックでした。
各藩がメンツをかけて選出した数多くの弓術家たちが競い合います。
日本一になれば英雄扱いになり、立身出世も思いのままです。
(中国の金メダル獲得者と同じです。一生生活や仕事の心配をする必要がなくなります。)
通し矢は江戸時代前期に最盛期を迎え、その後は実施されなくなりました。
スポーツの域をはるかに超えた過酷さがありますし、江戸時代が安定期に入れば武芸以外の文化も成熟してきます。
そういった要因から競技人口が減っていったのかもしれません。
ちなみに最盛期の日本記録では、10000本うって的中率が6割強でした。
一昼夜を24時間とすれば、1時間で416本。つまり約9秒に1本のペースを維持しなければいけないということです。
すごすぎます。
果たして人間の集中力はそんなにもつのでしょうか。
このマンガは、そんな超人的な通し矢で日本一を二度達成した、実在の人物の物語です。
京都蓮華王院本堂⇩
端から端までは驚きの長さですね!
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<あらすじ>
江戸時代初期の尾張の国。
貧乏武士の三男坊の主人公・星野勘左衛門は、家計を助けるために毎日百姓仕事に出ていました。
友人のダイノジも同じように日雇い労働に出ていましたが、武士としてそんな日常が情けなく思っていました。
勘左衛門の長兄は剣も弓も優秀で、藩の武術指南役への推挙もウワサされるほどでした。
次兄は頭脳明晰で、12歳から藩校の師範代を務めている秀才です。
一方、三男の勘左衛門は、自分は一生厄介者か他家の養子になるのが関の山だと人生を諦めかけていました。
彼はダイノジに、
「お前にも何か才能があるはず。男なら夢を持てよ」と言われます。
そして、二人して弓で日本一を本気で目指さないかと誘われます。
ダイノジが作った弓を使って、勘左衛門が矢を射るというコンビの誕生です。
それから毎日矢を射る練習に明け暮れます。
ある日彼らは、サムライに蹴られた牛が道を暴走する現場に居合わせました。
暴走を止めるために、勘左衛門は矢を牛の眉間に見事命中させて気絶させます。
そして彼は、それを見ていた尾張藩の弓術指南役・長屋六左衛門に「ワシの内弟子にならんか」と持ち掛けられます。
長屋は一度日本一になったことがある弓の名手です。
勘左衛門はダイノジと一緒じゃなきゃ意味がないと言い、一度入門試験を受けさせてくれるよう頼みます。
入門試験当日には、長屋の屋敷に腕に覚えのある弓術家たちが集まっていました。
日本一を目指すライバルたちです。
試験に合格した彼らは、日本一になるためにどんな修行をしていくのでしょうか。
<まとめ>
つまらない毎日にくすぶっていた少年たちが、一生を賭ける夢(通し矢で日本一)を見つけてそれに挑戦するという、青年誌には珍しいくらいのストレートな王道少年マンガです。
週刊少年ジャンプに載っていてもおかしくない真っすぐさです。
なぜ青年誌なのでしょうか。
同じビッグコミックスピリッツ連載の『あさひなぐ』(こざき亜衣)の大ヒットから、青年誌でもストレートなスポ根は需要があるという判断でしょうか。
絵も上手く、迫力があります。
弓道を知らない人が読めば、弓道の難しさと基本を知ることができます。
弓道というのは学生時代に関わらなければ、おそらく一生触れることのない世界です。
ゲームだとよく使われるメジャーな武器ですが、現実世界ではマイナー競技です。
通し矢のように、文化が衰退消滅してしまわなければいいのですが・・・
⇩ 映画化もされた、なぎなた部活道マンガ『あさひなぐ』
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