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【小説・文学】『血を売る男』—誇張された中国人の家族ストーリーだと思いたい

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『血を売る男』余華 / 訳:飯塚容 / 河出書房新社

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↑表紙怖すぎません?ホラーじゃないですよ。

 

献血という制度は昔からあったわけではありません。

その意義や価値が世間に認められ、「必要なら自分の血を無料で提供してもいいよ」と多くの人が考えるようになったのはいつからなのでしょうか?

あるいはそういった慣習がまだない時代に、人々はどうやっていたのでしょう?

 

瀉血というスっとぼけたエセ医療行為は論外として、

出血が激しければ輸血が必要だという知識は献血制度成立以前からありました。

「体内から抜け出た分は補充しなきゃ」と思うのは自然な発想ですよね。

 

『ブッダ』(手塚治虫)では、死にそうな仲間にブッダ自身が植物の茎的な管を使って輸血を施していました。さらに輸血実施前に血液型検査の超簡易版までやります。血液には種類があって、誰から輸血してもいいわけではないことが分かっていたんですね。

まあこれはフィクションですし、医師免許をもつ著者が読者である子供たちに安易に真似しないようにするための注意喚起・配慮的な描写なのだと思いますが・・・

f:id:A-key-Hit:20181116212352j:plain←潮出版社や講談社から出ています。

 

『輸血医ドニの人体実験』(著:ホリー・タッカー / 河出書房新社)によると、

17世紀にフランスの外科医・ドニによって初めて輸血の人体実験が行われました。

当時は「血液型」という概念もなく、本当に試行錯誤の連続だったようです。

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↑2013年出版。

 

当時の人々にとっては「輸血」とはおぞましいものであって犯罪でした。

だからこそドニはこっそり人体実験をするわけですが・・・。

まあ、自分の血を他人に与えたり、誰かの血を自分の体内に入れるということは気持ち悪くて考えられなかったということです。(宗教的タブーもある。)

衛生管理もいい加減だから当然の感覚だと思います。

 

結局、輸血技術が確立されたのはけっこう最近のことなのです。 

技術があっても需要に対する供給のバランスが取れていないと一般化されません。

献血が一般的になるまでは、人は自分の血を売っていたのです。(供給)

 

戦後間もない頃までは日本も中国でも自分の血を売っていたそうです。

病院はそれで必要な血を確保していたのです。

この小説は1950年代の中国の貧しい村が舞台で、そこに暮らす人々には「売血」という文化が当たり前としてありました。日々の仕事だけではお金が稼げないため。

血を売った方が圧倒的に短期でお金を稼ぐことができたため、

貧しい村では窮余の策として存在していました。

その手段がなければ飢えて死んでしまうので、ピンチなら誰だってやるでしょう。

 

 主人公・許三観は村のある二人組の男たちに連れられて、売血に行きます。

そこで自分の血を売れば相当稼げることを知ります。

ただ、血を抜かれた後はけっこうフラフラになるので、すぐに造血作用のあるレバーを食べるようにアドバイスされます。温めた紹興酒とともに。

 

彼は人生でピンチが訪れるたびに、血を売って資金を獲得してきました。

結婚で結納資金が必要なとき。

国が飢饉になって食糧を買う金がなくなったとき。(インフレ)

息子がよその子と喧嘩して頭をかち割って大ケガさせて入院費払えと迫られたとき。

そして息子が重篤な肺炎にかかって大きな病院で治療しないと助からないと宣告されたとき。

 

売血担当医には最大3ヶ月に1回でそれ以上は死ぬからやめろと警告を受けます。

この小説で採血されるのは1回400ml。

実際、日本の献血制度でも1回の採血量はそれくらいなら年3回までらしいです。

 

しかし、息子の治療費は1回の売血ではとても足りません。

彼は数日おきにこのペースで売血して資金を得ようとします。

3回目の採血後に、貧血で気絶してしまいます。

しかしそれでもまだやろうとします。

アカギと鷲巣の対決を思い出しますね。

f:id:A-key-Hit:20181116221711j:plain←2018年6月についに完結。

 

文化大革命やら飢饉やらを乗り越えて生きる家族を描いているわけですが、

シリアスな深刻さはなく、コントか?と思う程コミカルに話は進みます。

だから読み進めやすく、後味もよかったです。

「クソ真面目にブンガクなんか読みたくねえ」という方にもおすすめです。

 

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