【小説・SF】『ダスト』―ゴキブリやアリが消えたら地球はどうなるか
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『ダスト』チャールズ・ペレグリーノ / 訳:白石朗 / ヴィレッジブックス
SFのジャンルの一つとして「災害シミュレーションもの」があります。
小松左京の『日本沈没』や『復活の日』などがそうですね。
(他にも多くあるはずですが、例がパッと思い浮かびませんでした。)
大地震や洪水などの天災によって都市や国が崩壊してしまい、
そこで暮らしていた人々が逃げまどい、残り少ない資源を奪い合い、
政治や経済の社会システムをなんとか立て直そうとするものです。
この小説はそれです。
ある日、昆虫がいなくなっていることに人々は気が付きます。
(それまでにも兆候はあったけれど、そこまで注目されていなかった)
ゴキブリやアリがどこを探しても全く見当たらない(死体もない)。
原因を追求しようとするより先に、各都市で黒い霧が発生してそれにのみ込まれた人々は死んでいく現象が起こります。
霧の正体は数種類の一般的な「ダニ」でした。
本来は昆虫がダニを捕食していたのですが、昆虫が消えてしまったためにダニが大量発生したのです。ダニは肉食で昆虫の死体などを食べたりしていたのに、エサが不足してきたために人間を襲うようになりました。
家の扉をどんなにきつく閉めていようとどこかから必ずダニは侵入してきます。
怖いし気持ち悪いですね。
大勢が外出できないので経済はマヒし、輸送は中断されて食糧供給もストップ。
農業や畜産業も衰退し、食糧生産も絶望的。
街の治安は悪化し、政治家たちは有効な対策を立てられない。
ついにインドーパキスタン間で核爆弾が使用された。
アメリカの潜水艦も水中核爆発で消滅した。
どこの国が犯人か分からない。報復している場合ではない。
昆虫が消えてしまった原因を究明したいけれどそんな時間は残されていない。
なんとか生き残るための対策を立てないといけない。
人類にはもう半年先の食糧が確保できるかも疑問である。
人類滅亡に向かって事態は悪化の一途をたどるわけですが、
こういう小説を読み進めていくときに読者が気になる点は、
・最終的に人類は生き残れるのか
・復興のための対策案は?
・そもそもの原因は何だったのか?
ですよね。
実は、昆虫の大絶滅というのは3000万年周期で起きていることらしいです。
原因は「プリオン」やら「遺伝子時限爆弾説」やら色々提起されますが、よく分かっていません。地球の生物の生態系はそこでガラッと変わっているそうです。
我々は、ゴキブリやシロアリなんかは害虫としか認識しておらず、「絶滅したらいいのに」と願ったことがある人も多いのではないかと思います。
僕もそう思っていました。
しかし彼らは地球における免疫系ともいえる存在であり、バクテリアだけでは分解できないゴミ・死体を食べてくれているそうです。
彼らがいなければ生態系が崩れて、あらゆる動物・植物が生存できなくなってしまう。
地球の生物多様性というのは、個々の生物がきちんと役割をもって生態系を保持していたという点でも重要だったのですね。
ゴキブリやシロアリを毛嫌いして申し訳なくなりました。
僕の部屋に出現しなければもう文句は言いません。
森で幸せに暮らして下さい。
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