【新書】『エスペラント 異端の言語』―英語なんか公用語にするな
【広告】
紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『エスペラント』田中克彦 / 岩波書店
外国語をいくつも勉強しないと世界中で意思疎通ができないなんて、死ぬほど非効率だし面倒くさい。母国語は大事にしたい気持ちはあるけど、世界共通語ってのがあれば便利だよなぁ・・・と思ったことありませんか?
はい、あります。世界語=国際共用語。
その名はエスペラント(語)。
130年前。日本がまだ明治維新の頃。
ポーランドのザメンホフによって考案された国際人工語です。
当時はそういう世界共通語を作ろうという機運が盛り上がってきていて、エスペラントもその一つだったようですが、時代の淘汰を経て最も支持された言語になりました。
この本では、エスペラントが作られ広まった経緯とその理念、
あと文法が少し載っています。
自然言語(人が意図的に作り出そうとして作ったものではない言語。大体そう。例えば英語やドイツ語)を新たに学習するときのデメリットといえば、
・文法の不規則性(規則からの逸脱例の多さ)
・つづりと読むときの音が一致してないものがある。(不慣れな者は読めない)
(例:「bike」なら「ビケ」と読まずに「バイク」と読む。
ドイツ語は文字と読み方がほぼ一致している。ローマ字読みで大体いけます。)
・男性名詞、女性名詞という区別(区別のない言語使用者からしたら覚えるときの煩雑さが倍になる。)
・冠詞の種類が多いとどれを使えばいいか分かりにくい。
等々、数えだしたらキリがありません。
エスペラントはそれらの問題をクリアしています。
文法の規則性を徹底して、例外を作りません。(人工語のメリット)
例えば英語だと
現在形ー過去形―過去分詞 の変化が(基本の「-ed」を付けるのではなく)
make-made-made
take-took-taken
see-saw-seen
・・・オイオイ!いい加減にしろよと言いたくなるほど例外があります。
エスペラントでは最後の母音を「i」に変えるだけ。簡単~!
数字も「eleven」や「twelve」「thirteen」なんて鬱陶しい例外はなく
「ten-one」「ten-two」「ten-three」といった日本語に近い表現になっています。
名詞は必ず「o」で終わるし、発音はローマ字読みでほぼOK。
男性名詞や女性名詞の区別はありませんし、冠詞はたった一つだけ。
作家のトルストイは2時間でマスターしたらしいですが、ホントに分かりやすくて学習しやすいように設計された言語です。(アジア人でも。)
日本人は英語を中学高校と6年間やってもほとんどしゃべれないし、数年経てば読むことすら覚束ない有様です。しかし、エスペラントなら同じアルファベットですが文法は圧倒的に日本人も勉強しやすいものになっています。おそらく中学1年の1年だけでマスターできるでしょう。読めるし話せもするでしょう。
ゲーム感覚で覚えられます。
人工語の大きなメリットの一つは、学習者はネイティブと話す時に気後れしないで済むということです。皆スタートラインは一緒だから恥ずかしがったり、発音が変で笑われないかなと思わないことです。だってネイティブなんていないのだから。
英語じゃなくてエスペラントが世界公用語になったらいいのになと本気で思えるようになる本です。「英語って本当は学習しにくい言語なんだ」と自信を持って言えるようになります。
自信を持てたから英語が話せるようになるわけでもないんですが・・・。
日本人が英語を礼讃してしまう呪縛から逃れるための一冊にはなります。