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【哲学・思想】『わが闘争』―ヒトラーの頭の中

『わが闘争』アドルフ・ヒトラー / 訳:平野一郎・将積茂 / 角川書店

ヒトラーを批判するのは容易い。

彼を「悪」と断罪することに誰も反対はしないし、

そうすることで自分は「正義」の側に容易に立てるからです。

しかし、彼の思想はどこが危険で、どこが大衆を魅了したのかを理解しなければ、

第2のヒトラーが生まれたときに止めることができません。

 

この本は第一次世界大戦後に口述筆記されたものだそうです。

文章を読んだ限りでは、ユダヤ人に対する強迫的差別意識や偏見、あるいは虐殺や強制収容所設置といった行動を除けば、自分と他人に厳しい単なる理想主義者だったのではないかという印象を受けました。

 

しかし研究者の巻末の解説によれば、真実は違うようです。

 ヒトラーは自分の過去を後付けの理由・理屈で言い訳・美化しようと画策しました。

貧しくみじめな若い頃の生活や学生時代の劣等生ぶりを隠して、優等生であり才能もあったが父のすすめで仕方なくこのような進路を歩むことになったのだと嘘を並べたてます。自信家でナルシストの見栄張りだった。

弁舌だけは達者だったが、その他の数学や哲学では落第点を取り進級できないほどのレベルだし、建築や絵画の方面でも本当は才能などなかったそうです。

 

ついこの前の戦争では自分は勇敢な兵士であったような口ぶりで、

「事情が許せば、自分は何度でも戦争の前線に駆けつけてやる。祖国のために」と息巻いていたが、カッコつけているだけで実際はただの伝令兵で大したことをしていなかった。

 

まともに働いたこともない(バイトのみ)のに仕事の大変さを語る。

周囲の人間をバカにしているのは、単に周囲に浮浪者が多かっただけで(そういう場所で生活していた)、一般大衆の状況を本当は知らなかった。世間を知らなかった。

 

まあ、どこの国にもいますよね。

こけおどしの虚言ハッタリ男という類は。

周りからおだてられたら調子にのってカッコつけたがる類は。

 

立派なことを言うだけなら、嘘つきの才能さえあればいいのだ。

自分の弁舌に自分で酔えるナルシストである必要もあるが、大して難しくはない。