【小説・ミステリー】『アクロイド殺し』—あまりに有名な殺人事件
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『アクロイド殺し』アガサ・クリスティー / 羽田詩津子 / 早川書房
あまりにも有名な作品なので、未読なのにトリックは知ってるという状態でした。
トリックを忘れた頃に読もうと考えていましたが、無理そうなので諦めて読んでみることにしました。
事実を自分の目で確かめてみるのは大事なことです。
ミステリーには「フェアか否か」という視点が書き手に必ず要求されます。
フェアというのは読者に対してであり、「作者は読者に嘘を書いてはいけない」というものです。
厳密には、地の文(セリフ以外の部分)では事実しか記述してはならず、会話文においては本人が勘違いしているかもしれないし、誰かを騙そうとしているかもしれないので嘘を書いてもOKということです。(重要な情報をあえて隠しているのもOK。嘘を書いているわけではないので。)
叙述トリックというのは嘘を書いているのではなく、事実を読者に誤認させるような書き方をすることで成立します。
例外は一人称視点での地の文です。
セリフではないけれど、地の文には主人公の思考が描かれています。
これをセリフ扱い(嘘を書いてもいい)とするのか否か。
ルールとしてはOKだけれど、よほど上手く書かないと不自然に見えたり、読者から見たらズルい書き方に見えます。
さて、この小説は叙述トリックのミステリーです。
トリックの肝は、最初は一人称小説と見せかけて、実は手記だったという形式です。
手記ならば不都合な部分は省略していいし、手記の作者自身の思考もどれを書いてどれを隠す(省く)か自由に決められます。
この物語が手記形式だと分かるのは後半です。
途中までは一人称小説と読者に誤認させておき、地の文は事実であると刷り込ませる。
このトリックを知った上で読んでいたので、驚きはありませんでした。
当たり前ですが・・。
トリックを知っているミステリーは、読んでも面白さを1割も味わえないことが分かりました。
「ああ、この書き方は何も知らない読者だったら騙されるな~」というポイントを探しながら読むという楽しみだけでした。
90年前に発表された小説なので、当時は衝撃的だったのは容易に想像できます。
こういった形式を初めて体験したら感動しますね。
現在でもこのトリックについて何も知らず、未読の方は幸せなのかもしれません。
この衝撃を味わえる余地が、人生でまだ残されているのだから。
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