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【小説・SF】『文字渦』―もじの豊かさであそぶ

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紙の本も読みなよ / A-key-Hit

『文字渦』円城塔 / 新潮社

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円城塔作品はどれを選んでも難解なものが多いです。

この小説も僕には難しかったことは否めませんが、他の円城塔作品と比べたらやや読者に優しさを持って提供された部類だと感じました。

いつもはたいていその奇抜な表現と飛躍しすぎた思考速度に追い付けずに振り回されてしまうのですが、今回はなんとか食らいつけてゴールできた感じです。

 

大きな物語の筋はあるようで無いです。

12章の短編が少しずつつながっている連作短編の形をとっています。

文字(主に漢字)をひたすら様々な角度から遊び倒しています。

マンガ『キングダム』を読んでいる方だと嬴政(秦の始皇帝)が出てくるのでちょっとテンションが上がります。

 

登場人物たちはいたって真面目・シリアスに物事に取り組み、話し、考えているのにやっていることはかなりふざけています。

マンガ『バクマン』で「シリアスな笑い」が生み出せたら最強だ、という会話がありましたがこの作品もその方向性の小説です。(『バクマン』ではその戦略に従って「PCP」が生み出されましたね。)

特に192~193pと201~202pの見開きには誰もが驚くでしょう。

これは文庫になったときに成立するのか微妙なので、ハードカバー版しか作られないかもしれませんね。(文庫版は2018年10月時点でまだ存在しません。) 

 

芥川龍之介が「物語性はその小説が優れたものか否かを判定する指標ではない」ことを『侏儒の言葉』の中で提言していましたが、この『文字渦』もまさにそれに当てはまるなと感じました。

劇的な物語性(起承転結があって、大きな起伏があって緩急があるもの)が明確にあるわけではないけれど、作品世界の豊饒さや作者の熱量は伝わって来るんです。

文字で記述されているだけの内容ではなく、その背景にある著者の意図というかテーマの深淵まで、本を開くと覗くことができているかのような感覚。

錯覚かもしれないけれど、そういう錯覚を見せることができるのはその小説の力なんだと思います。

 

ちなみに円城塔作品を未読の方は『屍者の帝国』がオススメです。

おそらく一番分かりやすい。

(まあ序盤は伊藤計劃氏によるもので、彼が亡くなったので円城塔氏が書き継いだものなのですが。)

 

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