【小説・ミステリー】『その可能性はすでに考えた』―奇蹟の証明と悪魔の証明
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『その可能性はすでに考えた』井上真偽 / 講談社
今ドラマで放送中の『探偵が早すぎる』の原作者のデビュー作です。
主人公の探偵は奇蹟がこの世に存在してほしいと願っています。
奇蹟の存在を証明したいと思っているのです。
「奇蹟の証明」とはあらゆる可能性の否定でもあります。
あらゆるトリックを用いても、事件で実際に起きた現象を説明できない(成立しない)ならばそれは「奇蹟が起こったから」としかいえないからです。
次々に繰り出される仮説に対して、少しでも可能性が残されていてはいけない。
逆に、仮説を提示する側はどんなに低い確率でも完全否定されなければ勝ち(奇蹟ではないから)という「悪魔の証明」。
仮説→否定→新仮説→否定→・・という流れは本格ミステリーの基本構造と同じ。
主人公は奇蹟を証明したいのに、結局トリックの解明になってしまうという結果に。
ギャグなんだかシリアスなんだか、どちらにもとれます。そこが面白い。
目的は全く逆なのに、やってることは本格ミステリーの謎解きになってしまっているという不思議な楽しさ。
著者の着眼点というか発想のひねり方が素晴らしい。
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