【小説・ミステリー】『TOKYO BLACKOUT』―息継ぎできない緊張感がすごい
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『TOKYO BLACKOUT』福田和代 / 東京創元社
まさに猛暑の今、読むべき小説。
真夏の東京が舞台。
東都電力管轄内の送電線の鉄塔が爆破される。別の鉄塔はヘリが衝突して倒壊。
合計三ヶ所で実行され、電力が不足し、東京は停電に陥る。
停電テロであると判断されたが、犯人からの声明はない。
一体何が目的で大停電を引き起こしたのか。
著者の圧倒的な取材力にまず読者は驚かされるでしょう。
こういうことを調べ上げるのにどれだけの労力がかかるのかを想像すると、それだけで感動を覚えるほどです。お疲れ様でした。
日本の電力を支える人々は、日々どういう仕事をしているのか。
東日本大震災の当時は東京電力が批判されていましたが、そんな中で日本のインフラを支え続けた現場で働く方々は、毎日が緊急事態だったのではないでしょうか。
自分の仕事に誇りとプライドを持ち、不測の事態にも逃げずに組織が一丸となって対処する。そういう人たちの仕事の上に、我々の毎日の便利な生活が成り立っている。
この本を読んで、彼らの奮闘ぶりに感謝の念を捧げずにはいられません。
たった24時間電気が使えなくなるだけで、東京という都市は機能が麻痺してしまう。
東京だけに限らない。現代社会における都市はほとんどが電気に依存している。
東京をパニックに陥らせるために核兵器など必要ない。
たった数日停電させてしまえばいいのだ。
この物語では停電は1日とちょっとで復旧するが、それは犯人が優しかったから。
本気で東京を破壊してやろうというテロリストたちが犯人なら、この程度では済まない。都市はテロに対して、なんと脆弱なのだろう。
大都市に1日以上の停電が起こるとどういう事態になるのか。
そういったことを教えてくれる災害シミュレーション小説ともいえます。
とにかく中だるみがなく、ずっと緊張感を保持してラストまでいきます。
犯人の最後の犯行がご都合主義的な点には目をつぶっても構わないと思わせる程の勢いがあります。素晴らしい。
読んでいる間、頭の中でずっと、ドラマ「SP」のOPテーマが流れていました。
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