【小説・ミステリー】『IQ』―ロサンゼルスのシャーロック・ホームズ
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紙の本も読みなよ / A-key-Hit
『IQ』ジョー・イデ / 訳:熊谷千寿 / 早川書房
↑「このミステリーがすごい!2019」海外編第3位
「IQ」とは主人公アイゼイア・クィンターベイのイニシャルです。
もちろん探偵役なのでIQは高いのでしょうけど。
本家シャーロック・ホームズはイギリスなので上品なキャラクターばかりですが、この小説の登場人物たちは真逆です。まあ下品。
ワトソン役にあたるドッドソンが特にクズ野郎です。
物語としても完成度が高いけれど、ホームズと比較しながら読んでみてもまた楽しめます。あとがきにもある通り、著者も子供の頃、ホームズが大好きだったそうです。
現在と過去が交差しながら話は進みます。
現在は「犬を使う殺し屋を探し出せ」という依頼を受けて捜索を開始します。
過去は、主人公の幼少期から便利屋探偵になるまでの経緯が描かれていきます。
幼少期、主人公・アイゼイアは、目の前で敬愛する兄が車に轢かれて死んでしまうという体験をします。無力感と虚脱感に襲われながら、いつしか、運転していた犯人を探し出すことに熱中することで哀しみから抜け出すことに成功します。
結局、犯人は証拠が少なくて探し出せませんでした。
ある日、コインランドリーで老女の悩みを解決してみせます。
そこから口コミがどんどん広がり、彼に探し物や悩みを解決してくれという依頼が殺到するようになります。今では知る人ぞ知る探偵としての名声を得るに至ります。
アイゼイア自身は冷静で、思慮深く、思いやりがあるですが、周囲の人間が粗野な奴ばかりなので、どうにも生きにくそうです。しかし、だからこそキャラが立っていて周囲とのギャップが面白い。
ラスト2ページ(エピローグ)の終わり方には鳥肌が立ちました。
結局、兄を轢いた犯人は分からないままなんかい!とモヤモヤしていたら、
最後の最後で粋な?描写で物語は終わります。
「おお!天罰という概念がロサンゼルスでも通用するのか!」と感動しましたが、これは僕の誤読のようだったことが、あとがきで判明します。
しかし、ここで物語は終わった方が美しいので、僕は誤読の方を採用することにします。
小説というのは、自分の都合のいいようにいくらでも誤読していいのです。
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